元来,国家の目的は,個人を生存,進歩せしむるにあり 『人民讀本』 竹越與三郎

樋口陽一 小林 節 小沢一郎 憲法を語る (7/7)
本来の憲法論議が今,成立しない状態になっている。
だからこそ,「自民改憲」をさせるわけには いかない


2015年 4月 20日(月)16:00~18:00
樋口 陽一 東北大学・東京大学名誉教授
小林 節 慶應義塾大学名誉教授
小沢 一郎 生活の党と山本太郎となかまたち・代表
司会 堀 茂樹 慶應大学総合政策学部教授

画像

https://www.youtube.com/watch?v=d6PzKinupYo&app=desktop
01:50:53~02:00:46/02:00:46

樋口 陽一
 小林先生が今描かれたヴィジョンに少しでも実際に近付けていく,この日本という社会をですね。そのために,私は ある本の(1節を) 眼鏡かけて読みます。
 これをぜひ皆さんに紹介したいと思ってコピーをしてきました。もうこの歳になると,本は重いもんですから。<笑> 

 竹越與三郎という人の書物です。この人は1902年,もちろん明治時代ですね。それから衆議院議員当選5回。1922年<大正11年>に貴族院議員になってる人です。
 この人の 『人民讀本』。
 人民ですよ,市民じゃないんです。
 『人民讀本』という書物です。これは1901年 明治34年初版,初刷りです。
 これには西園寺侯爵<西園寺公望>が序文を寄せています。そういう人であり,そういう性質の本なんです。
 この 『人民讀本』 は,明治立憲主義, 時代を担う世代たちに読ませたいというので作った。 だから「読本」なんですね。
 各章の頭に「少年,少女よ」と呼びかけがあります。

 第4章に「虚偽の愛国心」という章があって,

「少年,少女よ」

 間,中略いたします。

「何事にても,我が国民の為したることは是なりとするが如きことあらば,それ真正の愛国心にあらずして,虚偽の愛国心なることを忘れること勿(なか)れ。我が国民の為したる事も是なることもあれば,非なることもある。
その非なることも,我が国民の為したることなりとて,強いてこれを是なりとすることあらば,これ他国に対して,我が国民の信用と威望とを損するものにして,決して愛国の所業にはあらず」


 メルケルさんと会談した私たちの代表者・最高責任者に,もう1回読んでもらいたい。<会場・笑。大きな拍手>

 これは1901年 明治34年です。凄くね,読まれたらしいです。版を重ねて,1913年 大正2年に,基本はそのままなんですけれども(内容を)増やした版が出ています。 
 そこでは同じ趣旨ですけれども,敢えて読ませていただきます。
 第9章「愛国すなわち忠義」。敢えて忠義という言葉を使ってますね。中を飛ばして,

「元来,国家の目的は,個人を生存,進歩せしむるにありて,決してこれを圧伏,抑制せんとするにはあらず」

 こういうふうに言っているのは<○○○ 数秒不明 >
 戦後だけの話しじゃないんです。 中略して。

「ゆえに国家の政治にして,この目的に外るることあらば,これ国家の過失なるが故に,愛国心あるものは起(た)つて国家の過失を鳴らして,これを匡正(きょうせい)せざるべからず。この時に方(あた)りては,国家の過失を鳴らすとは,即ち愛国の所業なりとす。然るに世には国家のことと言えば,これを非難せざることをもって愛国心とする者あり。奸雄(かんゆう)またこれに乗じて, その私を済(な)さんとする者あるは,最も恐るべきことなり」

 「奸雄」は狡(ずる)い悪い奴です。「その私を済す」 わたくしの利,結局,自分の利益のために,人の言うことを抑える人のことです。

 これ結構難しい,少年少女には。 政治家だけじゃなくて少年少女のレヴェルもかなり高かった。<会場・笑>

 そのあとに説明して,お父さんやお母さんの体に腫れものができたときに,切開すると痛がるだろうから止めとこうというのは親孝行じゃないよ,と。これ,忠と孝とセットにして説明しているわけですね。

「父母に多少の苦痛を与うるを厭(いと)いて これを切開せずして放任するを,孝とすべきか。あるいは多少の苦痛を忍ばしめてこれを切開するを,孝とすべきか」

 本当の孝行はと,分かり易くも説明しているんです。
 どうしてもこれをぜひ,5分の制限内でご紹介したいと思ってました。

 同時にこの著者は,放っとくと権力が「愛国心」「忠義」を押しつけてくる。上から押しつけてくる。
 それからもっと大事なこと,今の我々にとって同時に大事なことは,もっと悪いことは,大衆がそれをやる,ということをきちんと警告しているんです。<会場・響動めく>
 
 ネットでものを言わせないようにする。炎上させちゃう。それから,小林先生が何かを言おうとしたら 「あなたとは,前提が違うんです」とか。<会場・笑>

小林 節
 はい。

樋口 陽一
 要するに,フランクな議論を妨げる雰囲気が(蔓延しつつある)。ヘイト・スピーチなどはその極端な例ですけれどもね。
 それが一般の民衆,大衆の中でもそういうことが起こる。
 それを戒めております。

 ということを含めて,ぜひこれをご紹介しておきたかった。そういう歴史を踏まえて。
 で,小林先生といつの日か<会場・笑>理想的な論争ができるような,世の中全体がそういう環境にならないとですね,本当に,本来の憲法論議が成立しないんですよ。
 現に今,成立しない状態になっている。だからこそ,お2人とも,今このような憲法改正をさせてはいけない,ということに同意して下すってるんだろうと思います。
 今日は出てきて良かったです。
<堀氏に向かって微笑みつつ> <会場・大きな拍手>

堀 茂樹
 ああ,有り難うございます。<会場・大きな拍手続く> 

 これが,必要な対話だと思いますね。私は感動してもう言葉が出てきませんけれども。言葉にも色々あるな,と。その辺を浮遊しているいい加減な人を騙す言葉もあれば,今朗読していただいた『人民讀本』のような言葉もある,と。樋口先生や小林先生や小沢先生のような言葉もあるということを確認したいと思います。そして御三方の意見が,見解が一致するところで,今回自民党政権から出てきている「憲法草案」というのは,これは,大いに問題だと。本気で議論しなきゃいかんということだと思います。
 で,相手も,と言って良いんでしょうか。もちろんここにも自民党の「草案」を支持する方もおられると思いますが,今の憲法を根本的に変えようと,別の憲法に置き換えようと言ってるんですね。つまりアイデンティティを,基本原則を変えてしまおうという「案」。これは,私は,敢えて相手と言わせていただきますが,相手は結構本気だと思うんですね。
 先ほどの解説にもありましたが,各条項も,経済的自由の条項<憲法22条>に関しては制限を取っ払うとかいうことを考えてる面が,向こう側にはこれと言った思想がないかも知れないけれども,変なイデオロギーはありますね。
 ですから,反近代と言いますか反ヒューマニズムと言いますか,反普遍の,普遍というものを無視しようとする,そういうイデオロギーはやっぱり あって,それに基づいて本気でやろうとしていると思いますので。
 最後に,僭越ですけれども,私,司会者からのメッセージとしては,これは本気で取り組まなきゃいけない,と。そう思います。<感極まり少し涙>
 どうも有り難うございました。
<登壇された三人に向かって礼>
 <会場・大きな拍手。樋口陽一,小沢一郎,小林 節 三氏 立ち上がり礼>

< 了 >

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◇ 参考
竹越 與三郎
慶応元年10月5日(1865年11月22日)―昭和25年(1950年)1月12日(木)

近代日本人の肖像
http://www.ndl.go.jp/portrait/datas/287.html

『人民讀本』
青空文庫 作業中 
http://www.aozora.gr.jp/index_pages/list_inp978_1.html
作業中 作家別作品一覧 : 竹越 与三郎 No.978
人民読本(46204)(明治版)
1901(明治34)年9月12日増補再版發行

西園寺 公望
嘉永2年10月22日(1849年12月6日)― 昭和15(1940)年11月24日(日)

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