諸富 徹「財政民主主義からみた財政金融政策」2019/11/15 立憲デモクラシー講座 Ⅳ 第4回

諸富 徹「財政民主主義からみた財政金融政策」
2019/11/15(金) 立憲デモクラシー連続講座 Ⅳ期 第4回
諸富 徹(京都大学)財政学・環境経済学
『 私たちはなぜ税金を納めるのか 』新潮選書『 人口減少時代の都市 』中公新書 など
近 刊『 新しい資本主義 』

1.日銀「量的緩和政策」を財政民主主義から問う

金融政策の「財政政策化」?
・ なぜ、金融政策を財政民主主義の視点から問題にする必要があるのか?
・ 日本銀行(以下、「日銀」と略す)が「量的緩和政策」の下、われわれの生活にきわめて大きな影響を及ぼす政策を決定・実行しているにもかかわらず、民主主義的なチェック・アンド・バランスの外に置かれているのではないか?
・ 問題は、2点ある。
【1】日銀の意思決定は「中央銀行の独立性」の名の下に国民から遠ざけられている
【2】財政政策ならば予算過程を通じて金額や資金配分の流れが明示されるのに対し、金融政策はそうした情報が国会に提示され、議論に付される事はない
・ 「中央銀行の独立性」には根拠があるが、財政民主主義と無関係であってよいということにはならない

財政民主主義と「量的緩和政策」
【1】量的緩和政策による「財政民主主義の空洞化
 ➤ 財源の国債への依存を強めること(「国債ファイナンス」)は、租税による
財源調達(「租税ファイナンス」)に比べ、財政民主主義を掘り崩す傾向がある
【2】量的緩和政策が引き起こす逆進的な所得移転
(① 量的緩和そのもの、② 出口に伴う国民負担)
 ➤ 欧米では、量的緩和政策の所得分配効果が論争に
 ➤ 日本では、ほとんど公的論議の対象になっていないが、国民生活への影響からいって、財政民主主義の問題そのもの

5 図「国債ファイナンス」の現状 1 残高
[ 出所 ]日本銀行調査統計局「参考図表 2018年第3四半期の資金循環(速報)2018年12月21日
6 図「国債ファイナンス」の現状 3 構成比
[ 出所 ]日本銀行調査統計局「参考図表 2018年第3四半期の資金循環(速報)2018年12月21日
7 図3 所得階層別の金融・実物資産保有への参加率(%)
8 図4 資産価格の上昇から生じる純資産の価値増加率(%)
9 図 国債の保有者内訳(2018年6月末)財務省
10 図 一般会計 歳入
 [ 出所 ]財務省『日本の財政関係資料』平成30年10月
11 図 一般会計 歳出
[ 出所 ]財務省『日本の財政関係資料』平成30年10月

2.財政民主主義と中央銀行の独立性

日銀改正法にみる「中央銀行の独立性」の成立

・ 1980年代以降、国際的に中央銀行の独立形成が望ましいとのコンセンサス形成
・ 日本固有の背景事情として、第1に、1980年代の「金融自由化」、第2にプラザ合意以降、政府の圧力で日銀が金融を緩和し、バブルを発生させたことへの反省
・ 1997年に旧日銀法の全面改正による独立性強化が実現
・ 第1に、「物価の安定」と「金融システムの安定」という目的の明記
  第2に、政策委員会を最高意思決定機関として確立、政府代表委員は議決権限を失う
政策委員、総裁ほか日銀役員の立場の強化・・・国会同意を経て内閣が任命。特別の事情を除いては「在任中その意に反して解任されることがない」と明記
・ ただし、「独立性」は「透明性」と一体であることが強調。政策委員会の議事概要の速やかな公表や議事録の相当期間(10年)後の公表の義務づけ

「中央銀行の独立性」とは何か
アラン・ブラインダー(1994-1986年に連邦準備理事会(Federal Reserve Board:FEB )副議長)による独立性理解( Blinder 1996 )
・ 中央銀行の独立性は、「目標決定の独立性」と「手段の独立性」に分けられる
中央銀行に付与されるのは、後者に限定されるべき。前者は、民主的に選出された国民代表が決定する
・ 中央銀行は与えられた目標を達成するための手段選択について、自由を与えられる。そのためにも、中央銀行の独立性が必要
・ その代わり、国民は中央銀行に対して「正直さ」を期待する権利がある。また、中央銀行の行動と決定が民主的な正当性をもつためには、自らの行動について説明責任をもち、政策決定プロセスの透明性を確保しなければならない
・ 日本固有の背景
【1】高橋財政以降における戦前日銀による国債の直接引受けの苦い経験
【2】日銀の政府への完全な従属

5.黒田総裁下の金融政策と中央銀行独立性
・ 日銀による「サプライズ戦略」

【1】「量的緩和政策第一弾」(2013年4月4日)
市場予想を上回る大胆な金融緩和にサプライズが広がり、一気に円安・株高・債券高が加速
【2】「量的緩和政策第二弾」(2014年10月31日)
日銀が追加緩和政策に踏み切ることはないとの観測が広まっていたまさにその時に、見事にそれを裏切る形で追加緩和。想定外の事態に日経平均株価は暴騰。円も1ドル=109円から114円へと急落
【3】「量的緩和政策第三弾」(2016年1月29日)
「マイナス金利」導入というサプライズ。直前まで黒田総裁は明確にその導入を否定。想定外の事態に見舞われた市場の判断は混乱、日経平均株価は乱高下

・ 黒田総裁下の日銀の行動の特徴

【1】「首尾一貫した説明を与えることにより、関係者が適切な行動をとれる条件を整えること」や、「公共に対する説明責任の徹底こそが民主主義的政治構造における中央銀行の独立性」を正当化(ブラインダー)といった、近年確立されてきた中央行動の行動規範とはまったく逆
【2】日銀が狙ったのは、緩和政策による一時的な効果の最大化(「衝撃と畏怖」)
【3】透明性と説明責任の軽視(市場は、日銀の説明を信用しなくなる)

3.「時間稼ぎの資本主義」と中央銀行の金融政策

独立性に関する「形式」と「実質」

・ 日銀は、形式的には独立しているようで、結局は、時の政権に従属しているのが日銀の実態ではないか?
・ 「目標設定の独立性」と「政策手段選択の独立性」は、いったん区別できるかもしれないが、両者は現実には密接不可分
・ 日銀が、人事を通じて政権のコントロールを受け、目標設定でも政権から縛られる以上、政策手段選択で日銀が自由を享受できる余地は限られる
・ そうだとすれば、目標設定に変更がない限り、量的緩和政策は延々と継続される(「暫定的」なものの「常態化」)
・ これはまさに最近、ヴォルフガング・シュトレークが提起した「時間稼ぎ」の新たな形態に他ならない( Streek 2013 ; 邦訳版2016年)

シュトレークの資本主義論
・ 1960年代に高度成長の終焉を迎えた資本主義が、その後、なおも成長を継続するため、次々と「時間を稼ぐ」手法を繰り出して危機を先送りしてきたと指摘
・ 先送り手法とは(1)1970年代のインフレ、(2)1980-90年代の国家債務、そして、(3)2000年代の家計債務を指す
・ リーマンショックでこのメカニズムが破綻。一時的な財政拡張も再び緊縮財政へ切り替わった後、事態の収拾者として立ち現れたのが中央銀行
中央銀行は量的緩和政策によって国家債務を引き受け、資本主義の危機を先送りすることで、「時間を買う」役割を買って出た、というのがシュトレークの評価

結 論
・ 日銀もまた、現代資本主義のこうした「先送り」潮流の中にいる
・ 形式的には独立性を保障された日銀だが、実質的な独立性を時の政権との間で確立できていないように思われる
・ 日銀は規模を縮小しつつも、暫定的なはずの国債大量購入プログラムをなし崩し的に恒久化しつつある
・ 日銀もまた、資本主義の「時間稼ぎ」メカニズムの一環に組み込まれたといえる
・ 「巨額債務を付け替えつつ延命する資本主義」の運命は別途考察の対象としたいが、本報告の視点からは、その妥当性が公共性に照らして検証されるべきである
・ これは、単なる金融問題ではなく、財政民主主義の問題そのものであり、その存在意義が問われる局面を、我々は迎えている


(以上レジュメのとおり。以下はレジュメにない部分)
MMTの主たる主張
【1】日本や米国のように「通貨主権」を有する政府は、「自国通貨建て」で支出する能力に制約はない
【2】政府にとって税金は財源ではなく、国債は資金調達手段ではない
【3】政府は「完全雇用と物価安定」という公共目的を追求すべきであり、人々を一定以上の賃金で雇うことを約束する「就業保証プログラム」を実施すべき
MMTへの暫定的コメント
・ 財政制約を取り払ったケインジアン(経済の需要サイドの重視)
・ 中央銀行による非伝統的政策(量的緩和政策)との異同
1)一定の評価
2)実物経済への間接的な働きかけ
3)副作用の大きさ
・ 量的緩和政策の問題点を一定克服しうる政策 ~ ただし、インフレ/金利上昇を引き起こさない限りにおいて
・ 経済の供給サイドや資本主義の構造変化に関する議論が欠落 ~ スウェーデンの社会民主主義との対比

01:23:57~(質疑応答の部分 抜粋)
〇 経済政策が所得分配に与える影響
量的緩和政策をやめてMMTになおすほうが,低所得者に対して,より望ましい形になるのではないか

〇 税制について
1980年代以降,直間比率の是正ということが謳われてきて,消費税を増税する代わりに直接税を下げるから「皆さんの税負担のトータルは増えない」という説明をしてきた。
結果,法人税と所得税をずっと下げてきた。
日本の所得税の財源調達効果は非常に弱っている。累進度も緩和されて,過去と比較してもGDPに占める所得税の比率は,かなり小さくなった。
所得税の再分配効果は弱っている。

グラフ(縦軸:平均実効税率 横軸:所得)
所得が1憶円までは累進的。1億円以上では平均実効税率が低くなっていく=累退的=金融所得が高まれば高まるほど,税率は低くなる。
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金融所得の分離課税(総合合算課税ではない!)一律 20%だけ。他国では法人税率に合わせる形で30~35%くらい。
労働所得だけで1憶円以上は超レア。所得1億円超の人たちの大部分の所得はおそらく金融所得だろう。

〇 諸富教授の主張
☞ 金融所得の分離課税をせめて25%に上げる。
☞ 中央と地方 ~ 再分配するだけではなく,基礎的な地域の財政力を強める政策= 地方の「自ら稼ぐ力」をどう支援していくか ~ ドイツでの一例 = 再生可能エネルギーを中心にエネルギー事業を地域で立ち上げる → それを収益の中心に据える → さまざまな公益的な事業の展開 → 地域のビジネスのセンター ; エネルギーは誰もが必要とするのでほぼ確実に収益と資産を生む ~ 福島第1原発事故のあとの機運 = 電力会社の独占から分散型のエネルギー確保という構想を追求していくべきではないか


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◇ 動画は以下
https://www.youtube.com/watch?v=cOEFGmNVU8s
UPLAN
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