荻野文隆「日本の20年のデフレ…」 F・アスリノ来日記念講演(1/ ) at 早稲田
フランス10 日仏共同テレビ局
http://www.france10.tv/
https://youtu.be/9dRSFKXZ1S0
02:48:19
欧州の "智の巨人" が講演
「 EU・ユーロ体制のフランスとデフレ化政策20年の日本 主権と民主主義、没落は宿命なのか 」
フランソワ=アスリノ 「人民共和連合」 党首
@早稲田大学2018 10 10
日仏共同テレビ局 France10
2018/10/10 に公開
荻野 文隆 「 日本の20年のデフレと
EU・ユーロ体制のフランス 」
F・アスリノ来日記念講演 (1/ )
at 早稲田
【 挨 拶 】
岡山 茂 教授 (早稲田大学)
今日はここに来ていただいてありがとうございます。
皆さんに感謝申しあげます。
François Asselineau フランソワ・アスリノさんは,1週間ほどの短い滞在のあいだに,2回,来日のフランス人に講演をされ,また早稲田大学と京都大学で2回,学生に講演を引き受けてくださった。
そしてさらに,産経新聞の編集委員・田村秀男さんは我々との対談を引き受けてくださった。
今回の企画立案は荻野文隆さん。
共催は藤原書店,藤原社長とスタッフの皆さん。
皆さんに感謝申しあげます。
早稲田大学 政治経済学術院・岡山茂研究室では,フランスの文学と,「政治と文学」というテーマのゼミナールをおこなっています。
僕自身が19世紀末のフランス文学の専門で,1885年から1945年までという区切りをつけてやっているため,ゼミにおいて現在のフランスや日本の政治的状況についてまで話が及ぶことは,ほとんどありません。 また,ゼミとは別にル・モンドなどを読む授業もやっていますが,ル・モンドのテキストは読んでも,フランスのメディア状況にまで話が及ぶことはありません。
学生たちはフランスや日本の現在の政治状況に対して関心は持っているはずですけれども,3,4年生ということもあって,就職活動のほうが忙しい。
ものを考えるためにある大学で,そのような状況なわけですから,今夜わざわざ早稲田まで足を運んでくださった学外の皆さんも日頃は自分の身の回りのことを考えるだけで精一杯なのではないか,むしろそれだからこそ,今日わざわざお集まりいただいたのではないかと思います。
今夜は日本とフランスの現在,そのなかにどっぷり漬かれる良い機会になるはずだと思います。
EUは混迷しておりますし,日本も混迷しています。
それから抜け出るための解決策は,大概の場合,危ういものでしかありません。
まず,荻野文隆さんの発表をとおして,混迷そのものを見つめる視線を鍛えること。そこから始めて,アスリノさんの講演,そして田村秀男さんとの対談,と進めてまいります。 よろしくお願いします。
左から 荻野 文隆,François Asselineau,田村 秀男,岡山 茂
【 イントロダクション 】
荻野 文隆 教授(東京学芸大学)
「 日本の20年のデフレとEU・ユーロ体制のフランス 」
日本の状況とフランスの状況の共通点のようなものに焦点を当てながら簡単に。
❑ 日本でもフランスでも起きている政治離れ現象
ベルリンの壁が落ち,ソビエトが崩壊したあとの投票行動の変化
ベルリンの壁が落ち(1990年),ソビエトが崩壊(1991年)して 冷戦状況が終結したとき,それまで70%~80%近くあった投票率が落ちた。
日本では民主党が政権を獲った2009年の前段階には,期待値が表れて69.28%になった。
が,それの落胆が,激しい低下を示す。
第47回(2014年)には,戦後最低の投票率 52.66%。 第48回(2017年)は少し上がっても 53.68%
ベルリンの壁が落ち,ソビエトが崩壊したあとには,政治への関心,投票行動が明らかに違う方向に向かってきている。
1997年ころから,日本の場合,2つの幻想が広がった。
1つは,小選挙区制とは非常にいいものだという幻想。
当時,アメリカのものであれば何でもいいという潮流のなかで出てきたものだが,そのことにより日本の民主主義はさらに良い方向に展開するという幻想が生れた。
もう1つは,「緊縮財政を待ったなしでやるしかない,消費増税とはいいものである。それしかない」 という幻想。
1997年に橋本龍太郎内閣が,緊縮財政と消費税を3%から5%に増税。
そのことにより,デフレが起こって,現在まで20年間続いている。
2つの幻想が,1996年頃からの期間に動き始めて,いまだに日本を縛っている。
〔資 料〕
日本の衆議院の投票率の推移
http://www.soumu.go.jp/main_content/000255919.pdf
日本の参議院の投票率の推移
❑ フランス国民議会選挙の棄権率
1848―2017
現在,棄権率が非常に高い。
ベルリンの壁が落ちたあと棄権率はどんどん上がって,前回の国民議会選挙第1回投票では 棄権率が50%を超えた。
フランスのように政治好きな社会において,政治離れが起こっている。
ベルリンの壁が落ちたあとに,日本でもフランスでも同じ現象が起こっている。
フランスではマーストリヒト条約(1992年成立1993年発効)以降 「EUは,平和と繁栄と,諸国の助け合いをもたらす」 「ユーロを使うことにより,経済的な発展がさらに加速される」 という幻想が生れた。
しかし,実際に起こったのは,そのまったく逆。
問題は,メディアが,それをちゃんと分析し,報じないところにある。
❑ 緊縮財政と消費増税による 日本の20年のデフレ
1997年 消費増税。
以降,税収は横ばい,あるいは減少。
消費増税は税収増のためにおこなったが,実際は税収は減少,増税することにより「借金」が増えていく。 政府支出は横ばいになる。
税収減により,国債発行額が増える。
日本は,1998年以降 デフレになり,現在まで続いている。
日本の成長率とデフレ 2012―2017
安倍政権は,2014年に消費税を5%から8%に増税。
以降デフレータが急激に落ちる。
緊縮財政と消費増税とは,日本の首元を絞めて,活性化の可能性を葬り去っている。
バブルがはじけたあと,GDPの伸びが止まった日本。
そのあと1997年の消費増税,緊縮財政。
アメリカは順調に伸びている。ヨーロッパ諸国(ドイツ,フランス)も少しずつ伸びている。日本のように下がって横ばいになっている国はどこにもない。
下降し続ける日本の実質賃金
日本の実質賃金は,1996年,1997年が頂点で,そのあとずっと下がり続けている。
20年近くのあいだに15%ほど実質賃金が下がっている。
貧困化が,はっきりと見て取れる。
デフレが引き起こす問題 ~ 自殺
世界の自殺率 1900―2015
日本では1997年1998年に急上昇し,人口10万人あたり25人の方が自殺するという非常に厳しい状況、。
1970年台80年台には,フランス,ドイツ,日本は,同じレヴェルだった。フランスは少しずつ下降。ドイツは非常に低くなってきている。
社会にデフレ状況が続くと,いかにストレスが溜まって,さまざまな問題を引き起こすかを表している。
科学技術への投資 2000―2015
中 国 11倍に増加
韓 国 4.7倍
アメリカ 1.6倍
ド イ ツ 1.59倍
イギリス 1.52倍
日 本 1.06倍
隣国,周りの国がどんどん科学技術への投資をおこなっている。 その差は,日本にとって重い形で起こってくる。
❑ 日本のインフラ投資の減少と災害による多数の犠牲者。
日本だけは,インフラ投資がこの20年のあいだに半分以下に。
政府のインフラ投資 1996―2012
カナダ 327.00 (3.7倍)
イギリス 292.99 (2.9倍)
韓国 247.26 (2.5倍)
アメリカ 192.53 ( 約2倍)
フランス 165.82 (1.6倍)
イタリア 133.43 (1.3倍)
ドイツ 106.42 (1.0倍)
日 本 47.09 (半分以下)
日本のインフラ投資の減少と最近の災害での犠牲者
インフラを削ってきたことによって,雨が降ると最近では数百人規模の犠牲者がでる。
河川の管理,浚渫に出すべきお金をケチってきたことによる。 日本のインフラが完全に劣化してきている。
ドイツもあまり良い状態ではない(横ばい)。 ナチス・ドイツのときに造ったアウトバーンはかなり老朽化している。
イタリアは,高速道路の民営化により,高速道路の橋の落下事故(2018年8月14日)が起き,犠牲者が出た。 民間企業はメンテナンスの費用をできるだけ削減する。
日本の場合,
酷さの根底にあるのは,デフレ。
緊縮財政と 消費増税を続けてきた帰結。
< 続 く >


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http://www.france10.tv/
https://youtu.be/9dRSFKXZ1S0
02:48:19
欧州の "智の巨人" が講演
「 EU・ユーロ体制のフランスとデフレ化政策20年の日本 主権と民主主義、没落は宿命なのか 」
フランソワ=アスリノ 「人民共和連合」 党首
@早稲田大学2018 10 10
日仏共同テレビ局 France10
2018/10/10 に公開
荻野 文隆 「 日本の20年のデフレと
EU・ユーロ体制のフランス 」
F・アスリノ来日記念講演 (1/ )
at 早稲田
【 挨 拶 】
岡山 茂 教授 (早稲田大学)
今日はここに来ていただいてありがとうございます。
皆さんに感謝申しあげます。
François Asselineau フランソワ・アスリノさんは,1週間ほどの短い滞在のあいだに,2回,来日のフランス人に講演をされ,また早稲田大学と京都大学で2回,学生に講演を引き受けてくださった。
そしてさらに,産経新聞の編集委員・田村秀男さんは我々との対談を引き受けてくださった。
今回の企画立案は荻野文隆さん。
共催は藤原書店,藤原社長とスタッフの皆さん。
皆さんに感謝申しあげます。
早稲田大学 政治経済学術院・岡山茂研究室では,フランスの文学と,「政治と文学」というテーマのゼミナールをおこなっています。
僕自身が19世紀末のフランス文学の専門で,1885年から1945年までという区切りをつけてやっているため,ゼミにおいて現在のフランスや日本の政治的状況についてまで話が及ぶことは,ほとんどありません。 また,ゼミとは別にル・モンドなどを読む授業もやっていますが,ル・モンドのテキストは読んでも,フランスのメディア状況にまで話が及ぶことはありません。
学生たちはフランスや日本の現在の政治状況に対して関心は持っているはずですけれども,3,4年生ということもあって,就職活動のほうが忙しい。
ものを考えるためにある大学で,そのような状況なわけですから,今夜わざわざ早稲田まで足を運んでくださった学外の皆さんも日頃は自分の身の回りのことを考えるだけで精一杯なのではないか,むしろそれだからこそ,今日わざわざお集まりいただいたのではないかと思います。
今夜は日本とフランスの現在,そのなかにどっぷり漬かれる良い機会になるはずだと思います。
EUは混迷しておりますし,日本も混迷しています。
それから抜け出るための解決策は,大概の場合,危ういものでしかありません。
まず,荻野文隆さんの発表をとおして,混迷そのものを見つめる視線を鍛えること。そこから始めて,アスリノさんの講演,そして田村秀男さんとの対談,と進めてまいります。 よろしくお願いします。
左から 荻野 文隆,François Asselineau,田村 秀男,岡山 茂
【 イントロダクション 】
荻野 文隆 教授(東京学芸大学)
「 日本の20年のデフレとEU・ユーロ体制のフランス 」
日本の状況とフランスの状況の共通点のようなものに焦点を当てながら簡単に。
❑ 日本でもフランスでも起きている政治離れ現象
ベルリンの壁が落ち,ソビエトが崩壊したあとの投票行動の変化
ベルリンの壁が落ち(1990年),ソビエトが崩壊(1991年)して 冷戦状況が終結したとき,それまで70%~80%近くあった投票率が落ちた。
日本では民主党が政権を獲った2009年の前段階には,期待値が表れて69.28%になった。
が,それの落胆が,激しい低下を示す。
第47回(2014年)には,戦後最低の投票率 52.66%。 第48回(2017年)は少し上がっても 53.68%
ベルリンの壁が落ち,ソビエトが崩壊したあとには,政治への関心,投票行動が明らかに違う方向に向かってきている。
1997年ころから,日本の場合,2つの幻想が広がった。
1つは,小選挙区制とは非常にいいものだという幻想。
当時,アメリカのものであれば何でもいいという潮流のなかで出てきたものだが,そのことにより日本の民主主義はさらに良い方向に展開するという幻想が生れた。
もう1つは,「緊縮財政を待ったなしでやるしかない,消費増税とはいいものである。それしかない」 という幻想。
1997年に橋本龍太郎内閣が,緊縮財政と消費税を3%から5%に増税。
そのことにより,デフレが起こって,現在まで20年間続いている。
2つの幻想が,1996年頃からの期間に動き始めて,いまだに日本を縛っている。
〔資 料〕
日本の衆議院の投票率の推移
http://www.soumu.go.jp/main_content/000255919.pdf
日本の参議院の投票率の推移
❑ フランス国民議会選挙の棄権率
1848―2017
現在,棄権率が非常に高い。
ベルリンの壁が落ちたあと棄権率はどんどん上がって,前回の国民議会選挙第1回投票では 棄権率が50%を超えた。
フランスのように政治好きな社会において,政治離れが起こっている。
ベルリンの壁が落ちたあとに,日本でもフランスでも同じ現象が起こっている。
フランスではマーストリヒト条約(1992年成立1993年発効)以降 「EUは,平和と繁栄と,諸国の助け合いをもたらす」 「ユーロを使うことにより,経済的な発展がさらに加速される」 という幻想が生れた。
しかし,実際に起こったのは,そのまったく逆。
問題は,メディアが,それをちゃんと分析し,報じないところにある。
❑ 緊縮財政と消費増税による 日本の20年のデフレ
1997年 消費増税。
以降,税収は横ばい,あるいは減少。
消費増税は税収増のためにおこなったが,実際は税収は減少,増税することにより「借金」が増えていく。 政府支出は横ばいになる。
税収減により,国債発行額が増える。
日本は,1998年以降 デフレになり,現在まで続いている。
日本の成長率とデフレ 2012―2017
安倍政権は,2014年に消費税を5%から8%に増税。
以降デフレータが急激に落ちる。
緊縮財政と消費増税とは,日本の首元を絞めて,活性化の可能性を葬り去っている。
バブルがはじけたあと,GDPの伸びが止まった日本。
そのあと1997年の消費増税,緊縮財政。
アメリカは順調に伸びている。ヨーロッパ諸国(ドイツ,フランス)も少しずつ伸びている。日本のように下がって横ばいになっている国はどこにもない。
下降し続ける日本の実質賃金
日本の実質賃金は,1996年,1997年が頂点で,そのあとずっと下がり続けている。
20年近くのあいだに15%ほど実質賃金が下がっている。
貧困化が,はっきりと見て取れる。
デフレが引き起こす問題 ~ 自殺
世界の自殺率 1900―2015
日本では1997年1998年に急上昇し,人口10万人あたり25人の方が自殺するという非常に厳しい状況、。
1970年台80年台には,フランス,ドイツ,日本は,同じレヴェルだった。フランスは少しずつ下降。ドイツは非常に低くなってきている。
社会にデフレ状況が続くと,いかにストレスが溜まって,さまざまな問題を引き起こすかを表している。
科学技術への投資 2000―2015
中 国 11倍に増加
韓 国 4.7倍
アメリカ 1.6倍
ド イ ツ 1.59倍
イギリス 1.52倍
日 本 1.06倍
隣国,周りの国がどんどん科学技術への投資をおこなっている。 その差は,日本にとって重い形で起こってくる。
❑ 日本のインフラ投資の減少と災害による多数の犠牲者。
日本だけは,インフラ投資がこの20年のあいだに半分以下に。
政府のインフラ投資 1996―2012
カナダ 327.00 (3.7倍)
イギリス 292.99 (2.9倍)
韓国 247.26 (2.5倍)
アメリカ 192.53 ( 約2倍)
フランス 165.82 (1.6倍)
イタリア 133.43 (1.3倍)
ドイツ 106.42 (1.0倍)
日 本 47.09 (半分以下)
日本のインフラ投資の減少と最近の災害での犠牲者
インフラを削ってきたことによって,雨が降ると最近では数百人規模の犠牲者がでる。
河川の管理,浚渫に出すべきお金をケチってきたことによる。 日本のインフラが完全に劣化してきている。
ドイツもあまり良い状態ではない(横ばい)。 ナチス・ドイツのときに造ったアウトバーンはかなり老朽化している。
イタリアは,高速道路の民営化により,高速道路の橋の落下事故(2018年8月14日)が起き,犠牲者が出た。 民間企業はメンテナンスの費用をできるだけ削減する。
日本の場合,
酷さの根底にあるのは,デフレ。
緊縮財政と 消費増税を続けてきた帰結。
< 続 く >


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