銅のはしご

アクセスカウンタ

zoom RSS 憲法に敵意を持つ人びとの集会に「憲法改正」のメッセージを送った安倍総理(1/5)

<<   作成日時 : 2017/05/06 02:46   >>

トラックバック 0 / コメント 0

5月4日(木) 放送 TBSラジオ session 22
「憲法施行から70年。 安倍総理が改憲スケジュールを明言する中、いま議論すべき論点とは?」
荻上チキ×石川健治×道下徳成×田中宏×高安健将


石川 健治 「9条2項 それ1本ででやってきた軍事力の統制。 それを外すことはいかに危険なのか」

南部 広美 ; 憲法記念日に,日本会議が主導する憲法改正集会に,安倍総理は自民党総裁としてヴィディオ・メッセージ寄せ 「 2020年を新しい憲法が施行される年にしたい 」 と表明。
 また,具体的な改正項目として,憲法9条1項,2項をそのまま残したうえで,自衛隊の存在を明記する条文を加えることや,高等教育の無償化を挙げ,スケジュールを明言。

荻上 チキ ; 自民党総裁という格好で場得総理がメッセージを発信した。政治がかなり具体的に動こうという意思表示だと思うが,出されたからといって,それに合わせて国民が憲法論議を開始しなければいけない,2020年までに皆で論理武装するのがかならずしも必要かというと,そうではない。

南部 広美 ; そうではない。

荻上 チキ ; 具体的な明言があって,どうも動かしたいんだなということが分かる。今回は,いったいこの憲法,どういった論点があるのか議論していきたい。

南部 広美 ; では(スタジオ)ゲストを紹介します。 東京大学法学部教授で憲法学者の石川健治さんです。 よろしくお願いいたします。


石川 健治
 よろしくお願いします。

荻上 チキ ; よろしくお願いします。 昨日の安倍総理のヴィディオ・メッセージ,どのようにご覧になりましたか。

石川 健治
 まず,問題だと思ったのは,憲法に対して敵意を持っている人びとの集会に対して,こういうメッセージを送ったということです。
 広範に問題を提起したのではなくて,「憲法の敵と共同してやっていくのだ」 そういうことを仰ったわけですね。
 これはやはり問題があったんじゃないかと思います。

荻上 チキ ; 読売新聞に独占インタヴュで答えて,同じ日に,日本会議の主催する 「憲法フォーラム」 にヴィデオ・メッセージを寄せた。 まずは身内から発表する。 自民党総裁あるいは総理として呼びかける。 
 議会に対して言う,あるいは国民に対して直接発表するという格好ではなかった。


石川 健治
 そうですね。
 日本国憲法に対して敵意を持っている集団の,いわば原動力の元で改正を動かしたい。それがはっきりしてますよね。
 そこがきわめて危険だと思います。

 中身に関して,まず自衛隊の問題について言えば,やはりいちばん肝心なのはとくに9条2項前段 〔 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。〕 なんです。
 戦力不保持を定める9条2項前段をどうするかというのが,最大の問題であるわけですが,そこを迂回したということです。
 9条2項の前段は,軍事力に対するコントロールの最大の根拠条文になっているわけですね。
 ですから,軍事力に対するコントロールを外すことが,まずそこで含意されている。
 しかも,これまで正統性を付与されていなかった自衛隊に対して,正式に正統性を付与するということをやる。
 つまり,二重の意味で,これまで軍事力のコントロールをしてきた回路を断ち切ることになるわけです。

 1つは9条2項の前段ですけれども,もう1つは,やはり,9条が現在果たしている機能について深く考えていくと,問題の構造が見えてくると思うんです。

 9条というのは権限に関して,議会が自衛隊の組織を法律で作ってはいけないという意味合いを持っている。これが,1つ目の意味です。

 そして2つ目には,軍事力あるいは軍隊というものの正統性を剥奪するという意味合いがあったわけです。
 この点を担ってきたのが,いわゆる自衛隊違憲論であったわけです。 そのうえでいわば正統制 legitimacy レジティマシーの下に,財務官庁,財政権をつかさどる官庁が軍拡予算を組まない。 そういう意味合いがある。

 この3つの層を成す構造として9条は機能してきた。
 その第1の層である,自衛隊を国会が組織してはいけないのだという点は,もうすでに破られている。
 しかし,第2,第3の層は動いているわけですね。

 第2は,9条によって自衛隊から正統性を剥奪すると。それから もう 1つは,それを踏まえて財務省が軍拡予算を組まない。 こういういうことがあったわけですけれども,この2つ目の根拠を,今回,外そうとしているわけです。

 9条によって自衛隊の正統性を剥奪するということを通じて行われてきたコントロールが,今回,消えるということになるわけですから,第2のコントロールも突破される。
 第3も,おそらくそれに併せて突破されるだろうことになるわけですから,実はご当人が思っていらっしゃるよりも遥かに危険な提案だと言っていいと思います。

荻上 チキ ; 憲法9条は,1項,2項からなります。 1項で 「戦争を永久に放棄する」 とあるが,当然,日本以外の国も,国際条約上,放棄はするという約束はしている。 そのなかで日本の憲法が特殊なのは2項 「陸海空軍,その他の戦力は保持しない」。
 だけど今,自衛隊を持っている。 憲法解釈などから,国民の権利,自由,生活を守るための最低限の範囲だという解釈を導きだして,ブレーキとして機能しているのが現在なわけです。 だから国防予算も一定金額以上は出してはいけないということを相対的に出すという見積りで今はやっている。
 ただ,自衛隊を認め,戦力を保持しないということを外すような格好になるなら,当然ながら その歯止めはなくなる
 仮に,2項を維持したうえで 「自衛隊は保持する」 となった場合には,歯止めはどうなるのでしょうか。


第9条 【 戦争の放棄、軍備及び交戦権の否認 】
 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇(いかく)又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄(ほうき)する。
A 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。


石川 健治
 2項を保持しているから,いいようにも見えるわけなんですけれども,しかしまず議論として2項を迂回しようとしていることの危険性があります。 本丸を議論しようとしていない。

 それから,2項を迂回するロジックというのは,すでにできているわけですよ。 かつての法制局が考えて,迂回するロジックができている。
 ですからそこを本格的に議論して,より強化されたシヴィリアン・コントロールを考えるというのなら,まだ 1つのあり方なんですよね。

 これまでの9条によって軍事力をコントロールする方式に替えて,新たな軍事力統制方式を提案するというのであれば,これは意味のある提案だということになると思うんですが,そこはしないで,しかも現状におけるいわば9条方式とでも言うべき軍事力の統制の方法を支えてきた,自衛隊からの正統性の剥奪,つまり本来はないはずなのだと。 ここが大事だったわけですね。

 本来あってはならないんではないかという疑いをかけられることが,自衛隊の行動もいわば慎みをもたらしてきたわけで,結果として自衛隊は非常に良くやってきたし,これまで,コントロールされた軍隊だったと思います。 それは多分に自衛隊の正統性に危ういところがあったからだというのが大きいんだろうと思います。

 正統性を付与されてしまいますと,その点の慎みがなくなって暴走する恐れが出てくることは,大いに考えられることなので。

 ですから,総体として考えると,今までよりも軍事力に対するコントロールを弱める提案になっているのではないだろうか。
 ここが,まさに権力の統制に最大の関心を持つ憲法学から見て,もっとも危険だと思う点だと思います。

荻上 チキ ; 自衛隊の位置づけを明確にするかどうかがまず第1のポイントとしてある。 この間の安保法制でも,国際的な集団安全保障,集団的自衛権の議論で,個別的自衛権は保持しているけれどもそれ以上は保持していないというのが,旧来の内閣法制局の見解でもあった。 それを一部変更した。 それは自衛隊を保持するという形にする際に,どこまでやるのか。 集団的自衛権も国際的安全保障も対応していくというところまでやるのかは,議論をしなければ,自衛隊の位置づけを明確化したとは言えないですよね。

石川 健治
 そうですね。
 ですから結局,議論を迂回して,公明党にとって呑みやすい形にしようとしたのではないかというのが 率直な印象ですね。

にほんブログ村 政治ブログ 議員応援・議員批判へ
にほんブログ村 政治ブログへ


石川 健治 「 高等教育の無償化は一刻も早く解決すべきで,憲法なんか作ってる場合じゃない 」

荻上 チキ ; 公明党はかねてより加憲,今の憲法の精神を残しつつ必要なものがあれば加えると主張してきた。 公明党からも,こういった方向であればまあ概ね歓迎だと言いつつ,スケジュールありきはどうかという意見が出されている。
 また,高等教育無償化を入れることで,維新の会を取り込むことも 動き出している。
 安倍総理は先日,立憲主義の機が熟したと,そして,護憲,改憲と言う二項対立は不毛だという発言をした。 そして,かねてより2020年に新しい憲法にしたいと自分は言ってきたんだと。 これはちょっと初耳なんですが,どうお感じになりますか。


石川 健治
 まず,高等教育の無償化がそんなに大事ならば,一刻も早く法律を作るべきですよね。
 なぜ憲法改正をするのか。 これはまったく理由になっていない。

荻上 チキ ; たとえば高校無償化,大学の奨学金問題とか,もっと早く取り組んでいてもおかしくない。

石川 健治
 そうです。 一刻も早く解決すべきですね。 憲法なんか作ってる場合じゃないんじゃないでしょうか。

にほんブログ村 政治ブログ 議員応援・議員批判へ
にほんブログ村 政治ブログへ


石川 健治 「 改正の機が熟したと言うのであれば,安倍総理はご自身の支持勢力と手を切るべきだ 」

石川 健治
 もう 1つは 「改正の機が熟した」 と言うのであれば,安倍さんにとっては痛みを伴う選択かもしれませんが,ご自身の支持勢力から手を切るべきだと思います。
 つまり,ご自身の強力な応援団というのは,日本国憲法に対して敵意を持っている,そういう人びとであるわけですね。
 敵意を持たれるのは,これは自由なんですけれども,敵意を持って憲法ごと立憲主義を押し流しかねないという方向で動いておられるということが,いちばん心配なわけです。
 その部分との繋がりを切ってくれれば,場合によっては本気度が感じられるわけですけれども,今回はむしろ,そちらの支持勢力にまずは訴えている。
 ですからその意味で,非常に筋の悪い問題の立て方になっているのではないだろうかと思います。

荻上 チキ ; 今までは,自民党憲法草案を出してきました。 それから,日本会議などの保守団体も,たとえば家族の役割を明記するであるとか,あるいは公的な福祉にある程度ブレーキをかける。 個人主義や人権を尊重することで今の日本が誤った方向に行ったということが,保守的な論客からは出てくる状況にある。 そういったものではないんだ,そういったものを守りつつ,これだけは必要なんだという憲法改正なんだと,安倍総理がどこまで言えるのか

石川 健治
 そうですね。 その点で注目されるのは,自衛隊というふうに言っておられることです。
 これは,どの程度のことを仰ろうとしたのか,まだ現時点ではっきりしませんけれども,国防軍を創設したい,あるいは国防軍という名の組織として自衛隊の正統性を付与したいというのが,2012年の自民党の改憲草案の目玉だったわけですので,それが,自衛隊にもどったんだとすると,むしろ,かつての自民党の改憲草案にもどった。 常識的な改憲草案にもどったということになるわけで,その意味でも,立場をはっきりしていただきたいと思うんですね。
 ご自身の直接の応援団の主張とは,いったん手を切って,より広範な支持を得られる土俵で勝負したいと仰っているのかどうか。 そこはぜひ注視していきたい。

荻上 チキ ; 今,憲法改正に反対している立場の人は,とくに自民党の憲法改正草案を1つの本音と見立てて,そういった国柄を目指すのは恐いというような立論をしていたりする。 となると,安倍総理がリーダーシップを発揮しながら,あの憲法草案は 「なし」,白紙にもどしつつ,1つひとつ積み上げていくなかで,たとえば自衛隊に関してやっていくなど,順序は要るでしょうし,逆にそれをやると民進党が攻める手を1つ奪うということになる。

石川 健治
 そうなんですね。
 この2012年の草案というのは,なかなか面白い機能を果たしている草案で,まず自民党内部でも,突っ込みどころ満載だなんてことを仰る方もおられるぐらいで,あまりに突っ込みどころがあるので,論憲が始まってしまったんですよ。
 それまでは,憲法を議論すること自体怪しからんと言っていた人びとが,率先して論憲を始める。 論憲の誘い水になったという意味じゃ,極めてよくできたフェイクだったんじゃないかという気がするんですよね。

荻上 チキ ; サンドバッグになることで,火に油を注いで炎上するみたいな。

石川健治
 ええ。 だから,どこかで,これを下げてしまうんじゃないか。 成熟した政治家として,安倍さんは2012年の草案を引き下げてしまうんじゃないか,というような気もしていますだけに,ここは注目したいと思います。

荻上 チキ ; 自衛隊は,多くの人が支持をしている。 実は今回安倍総理も発言のなかで言っているが,災害援助と日本人の命を守るために領海,領空を守っている。 このときには,個別的自衛権プラス災害救助などが支持されている。 そこから先の,自衛隊の形が変わることを支持しているかというとそれは別問題であるわけです。 短いヴィディオ・メッセージですから,そこが具体的にていねいに説明されているわけではないので,そのあたりの意味についてはさらに深く聞かなければ分からない。

石川 健治
 そうですよね。 そう思います。
 個別の自衛官の方は,非常に良くやっておられる。 その人びとから正統性を剥奪するということが,問題がないとは思ってないんです,憲法学の立場から。
 しかし,とにかく軍事力の統制を,これ一本でやってきたという現状のなかで,それを外すということが,いかに危険なのかということに,多くの人に気がついていただきたいと思いますね。

< 続く >

にほんブログ村 政治ブログ 議員応援・議員批判へ
にほんブログ村 政治ブログへ
お読みいただきありがとうございます
ブログランキング・にほんブログ村へ

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
憲法に敵意を持つ人びとの集会に「憲法改正」のメッセージを送った安倍総理(1/5) 銅のはしご/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる