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zoom RSS 山口二郎「多数意思が誤りなき政策決定に繋がるのか?」

<<   作成日時 : 2017/01/15 15:56   >>

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立憲デモクラシー講座 第2期 第4回 1月13日(金)
山口 二郎 教授 法政大学 政治学
「 民主主義と多数決」
不条理は不条理と言い続けること
アベ・コンセンサスは長持ちしない
我々は,別の政治的課題を用意しておく

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レジュメ配布はなし。以下,パワポを撮影して作成した部分は黒い文字。聴講中のメモはピンク。

今の日本の安倍政治を支える多数意思とは何か?
1月10日NHK発表 「支持する55% 支持しない29%」


1 2016年:終わりの始まり?
@ アメリカ大統領選挙と多元的社会の否定
@ ウイナー・テイク・オールの経済と社会

・欲求不満の刺激と憎悪による動員
・雇用の劣化と格差、貧困
・メディアの劣化と品性の喪失
・偽救世主としてのデマゴーグ

アメリカの建前
・ We hold these truths to be self-evident , that all men are created equal , that they are endowed by their Creater with certain unalienable Rights , that among these are Life , Liberty and the pursuit of Happiness. ―
・ The Declaration of Independence より

1776年 アメリカ独立宣言 一部
私たちは以下を自明のこととして保持する。 それは,すべての人間は平等に生まれついており,生命,自由および幸福の追求の不可侵の権利が創造主により付与されているということである。

初めは文字通り男性のみであった“ all men ” 現在はすべての人間という意味になっている。

トランプ勝利の意味
・民主政治の前提:規範や原理の存在
・少数者の特権だった自由や尊厳を普遍化したのが民主主義の歴史
 労働者、女性へ、そして黒人へ
・建前の否定=自由や尊厳を独占したいという主流派のわがまま、焦り

19世紀アメリカでは産業革命で工業化したことにより雇用,賃金に対する不満が増大,また農産物価格の下落などによる不況から,二大政党に対抗して人民党 People’s Party(農民政党)ができた。このアメリカに始まったポピュリズムは,本物の強者に対する運動だった。
また民主党では,独禁法,反帝国主義の改革案などを提唱し,後のニューディール政策を支えたウィリアム・ジェニングス・ブライアン(1860年3月19日―1925年7月26日)。

21世紀のアメリカのポピュリズムは,移民排斥など,強者ではない者に矛先を向ける。
トランプは,新たな金権政治の始まり。


建前を公然と否定する社会
・建前や規範と現実がかけ離れているのは当たり前 だからと言って建前が無意味なのではない
・悪しき現実を一歩でも変える際、テコの支点になるのが建前
・悪しき現実を喜ぶ人間が建前を否定する

規範や原理を否定するトランプは,時計の針を逆戻りさせた。

A イギリスにおける国民投票
・議会主権という観念の否定
・国民に決めさせることの巨大なリスク
・エリートの脆弱化とデマゴーグの噴出
・ Post-truth という厄介な時代

BREXIT(英国のEU離脱)。 保守党のなかの意思決定への不満。
「EU分担金は間違っている」と離脱派の旗振りをしたイギリス独立党ナイジェル・ファラジ(1964年4月3日〜) は,公然としたデマゴーグであったが,2016年7月4日に党首を辞任。
Post-truth の「成功」(ポスト・トゥルース=脱真実・真実を顧みない)。


欧米の混乱が突きつけた課題
・経済的不安定、生活苦の中にいる人々のなかで、再び建前の支持を取り戻すことは可能か
・憲法と社会経済争点の結びつきをわかりやすく描く必要

多数意思が誤りなき政策決定につながるのか。

第3の道の破綻
・グローバル資本主義と社会民主主義の折衷という路線の不十分さ
・イギリス、アメリカにおける左派の復活と内輪の盛り上がり
・政権交代による政策転換というモデルは依然として有効か?

資本主義のもたらす雇用の劣化。今回の米大統領選では,五大湖周辺でクリントンが負けた。
社会民主主義的な勢力が大きくはならず内輪での盛り上がりにとどまる。米バーニー・サンダース(1941年9月8日〜),英労働党ジェレミー・コービン党首(1949年5月27日〜)。

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2 アベ化する日本と政治制度
@ アベ化とは何か
・自己愛の強い幼児的リーダーの跳梁跋扈
・批判に対する耐性の消滅
・虚言、デマをためらわない、ウソがばれても恥ずかしくない
・事実と虚構の区別ができない反知性

世界的に拡大する政治の劣化は,時間軸では日本の2012年以降の「アベ化」から始まった。

A 安倍政治と権力の過剰
・あらゆる公的機関における「安倍的なるもの」の浸潤
・人事権を通した首相支配の拡大
・批判的言論の圧殺 = メディアと学問への攻撃
・権力と暴走の無責任 = 明示的に禁止されていないことは何をやってもよいという権力の開き直り

「安保法制」安倍総理による内閣法制局のコントロール。
NHK,最高裁判事ほか,人事のコントロール 〜人事が権力の源泉である。


B 議院内閣制の陥穽
・議院内閣制における権力分立という幻想
・内閣における立法、行政の権力融合
・司法部に対する行政権の支配
・歯止めとしての政権交代

議院内閣制では,国会の多数派が内閣を掌握する。
19世紀英ウォルター・バジョット( 1826年2月3日―1877年3月24日)政治学の古典『イギリス憲政論』
議会の多数派→立法・行政の権力の融合 fusion of power 〔比較政治学〕。

日本における国政調査権は画に描いた餅。国会が内閣を監視するのは,与党分裂という例外的なときのみの建前でしかない。
また,日本の司法の権力の立法・行政権力に対する弱弱しさ。
現在の安倍政権は,大統領制より性質が悪い 〜 任期中に大きな権力を預けてしまう議院内閣制。
定期的に政権交代が起きなければ,政府に大きな権力を集中させることになる。
内閣,与党の暴走をどうコントロールするか 〜 国民が選挙で民意を示す。


議員内閣制度
図U−1 政官関係の日英比較
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英国では,官僚は政治家とは直接接触しない。

55年体制における立憲主義
・日本の統治機構における割拠主義の伝統
・多頭一身の怪物<ヤマタノオロチ>と決定核の不在
・派閥政治と自民党の多頭制

かつての日本では,大臣は儀礼的な存在であった。
55年体制。与党内の割拠主義は,権力の暴走=独裁を防ぐのに有効なブレーキであった。
縦割りの弊害として「省益あって国益なし」としても,各省の“親衛隊”と派閥が相互依存して独裁を防いだ。
1960年岸首相退陣とは,隙あらば総理の椅子をねらう三木武夫,石橋湛山ほかの存在。


日本的内閣制度の特徴
・内閣における政治の不在 ⇐ 伝統的憲法学説の罪 国会の最高機関性を空文化
憲法41条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
これを「政治的美称」とした憲法学者・宮澤俊義1899年3月6日―1976年9月4 日。

・与党と行政のインフォーマルな結合
部分の合理性,最高化を求める傾向。

・与党における分担管理と予定調和 = 政党なのに統治意思が不在
国益 =省益1+省益2+省益3+・・・+省益n
自民党はスクラップ・アンド・ビルドが下手。


C 制度改革と権力中枢の創設
・90年代における新たな政策課題の叢生
1990年代バブル崩壊,少子高齢化,冷戦後の日本の位置ほか。
薬害エイズ,官のムダ遣い,ほか。


・予定調和の破綻と舵取り不在の政府
・政治的リーダーシップをめぐる欲求不満 = 官僚が反対、抵抗する政策課題の重大化

橋本行革がもたらした変化
・政策形成における視野の拡大
・権力中枢を支える組織体制
・自民党における求心力の低下
・政府の失敗と官僚制の威信低下

小選挙区制が自民党を変えた 〜 求心力の低下。
政務調査会で決めることなどなくなってきた。世代交代。
官邸の力の強化。


民主党政権の失敗
・看板倒れの政治主導
・政策転換における方向性の不在
・権力行使における戦略性の不在

D 2つの安倍政権の相違
・第1次安倍政権(2006―2007)
 小泉政権という比較対象
 世論コントロールの失敗
 多すぎたアジェンダ
・第2次安倍政権(2012― )
 民主党政権という比較対象
 世論統制と国民の期待水準のコントロール
 内閣官房を中心とした政府のグリップ

第2次安倍政権――民主党のその後を利用し,国民の期待水準を低く保つ 。
日本における英ウエスト・ミンスター・モデルの成功 ≒ 期限付き独裁の成功。
警察官僚,検察官僚が内閣の内部に入り込む。
ウエスト・ミンスター・システム 〜 一元主義型議院内閣制 多数決型民主主義。


議院内閣制の本質
・政権交代の可能性が消滅
・権力融合の歯止めなき進行
・期限付き独裁の無期限更新  恣意的解散と選挙インフレ

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3 安倍コンセンサスと一強政治
@ 安倍政権はなぜ高支持率を維持するのか
・個別政策における大きな不支持
・政権全体としての支持
・他に代わりがないという理由だけか
・安倍政治というOSをとらえる必要

A 新中間大衆と安倍コンセンサス
@ 新中間大衆という概念(村上泰亮)

・高度成長がもたらした均質的中間層
・職業、地域、階層を超えた生活様式の共有
・脱伝統主義
・個人主義と消費志向
・生活保守主義という政治態度
・1980年代の日本を説明するモデル

村上泰亮 むらかみやすすけ 経済学者(1931年2月27日―1993年7月1日)
『新中間大衆の時代―戦後日本の解剖学』 『反古典の政治経済学』 『文明の多系史観―世界史再解釈の試み』 など。

中曽根時代 〜 生活保守主義。


A 新中間大衆の解体
・1990年代以降の経済社会の変容
・日本的企業の消滅
・グローバル化と格差、貧困
・周辺諸国の台頭と日本の劣位
・落ち目の時代の生活保守政治とは?

図 企業収益と勤労者所得の乖離
1994〜2004
出所:内閣府「四半期GDP」財務省「法人企業統計調査」
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赤線 経常利益(全産業)<右目盛>
青線 雇用者報酬<左目盛>
1994年と2004年で企業利益は約2倍となるが,賃金は急激に下がり続ける


図 貧困の拡大
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1999年 白い◇ 2004年との比較では(70歳代以上)だけ貧困率が高い
2004年 黒い■ (45〜49歳と70歳代以上)以外の全世代で,貧困率が上昇


B 共感の消滅と幻想分配政治
・近隣の脅威と安全保障幻想
・貧困、格差と生活安全幻想
・破綻回避という「実績」

若い世代に貧困が増加する → リアルではない“富”を持つ幻想。たとえば「安保法制」

分断社会の正当化論理
・ユニバーサル・サービスの否定と「足を引っ張る者」の排除
・市場原理と公共サービスにおける「等価交換原理」の徹底:自分は足を引っ張る側ではないという思い込み = 落ち目の時代における生活保守政治
・社会的共通資本の解体という政治戦略

社会的共通資本を商品化してしまう。

頑張る者に報いるという論理
・地方創生 : 一律の交付金から意欲のある地方に対する補助金へ
・大学教育 : 運営交付金からプロジェクト補助金へ
・JR: 鉄道からの撤退と収益事業の展開、そして株式上場へ

不幸への対処における論理転倒
・正しい日常を脅かす不幸にどう対処するか
・正常な社会を維持するための救済政策の必要性
・正常な生活を送っている多数派の邪魔にならない程度の政策

プロクルステスのベッド
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プロクルステスのベッド症候群
・問題に合わせて対策を立てるのではない
・手持ちの資源の範囲で対策を考え、それに合わせて問題を定義する
・問題からはみ出す被害者を無視し、多数派は対策を立てたと良心に浸る
・絆の強調の中で広がる社会の分断

安倍政治の根底にある「ガンバレバ,ムクワレル」=プロクルステスのベッド。
個々の事情を無視し,強引に基準に当てはめることのたとえ。ギリシャ神話。 強盗プロクルステス Prokrustés は,捕えた旅人をベッドのサイズに合わせて足を切ったりハンマーで叩いて伸ばしたりした。
現在の切り捨て = 水俣病・大量の「未認定」患者。原発・「自主」避難者。


安倍コンセンサスの中身
・他者に対する無関心と自己中心主義
・社会という視野の否定
・永遠に続く今だけに目を向ける
・可能な限り幻想にしがみつく

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◇ 立憲デモクラシーの会
http://constitutionaldemocracyjapan.tumblr.com/
市民として 憲法に従った民主政治を 回復するために
twitter
https://twitter.com/rikkendemocracy

連続講座 第5回 予定
2017年3月10日(金)18:30〜20:30
早稲田大学 早稲田キャンパス3号館 402教室
青井 美帆 教授 学習院大学 憲法学
「 裁判所の果たす役割 」

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