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zoom RSS 第1次大戦以前に起きた資産の極端な集中は,現代と同じだった

<<   作成日時 : 2015/02/05 14:33   >>

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Eテレ 2015年01月30日(金)放送分 (2/3)
トマ・ピケティ『21世紀の資本』第4回「強まる資産集中
〜所得データが語る格差の実態〜」


❏ 資産不平等の歴史
 下の図は,パリ市民とフランス全体の上位 1%の資産シェア(占有率)を比較したものだ。

(図表)パリとフランスの資産格差
最上位1% 資産シェア(占有率)

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 第 1次世界大戦までのパリ市民の間での不平等は極めて大きく,しかも 拡大する傾向にあった。 その後一定となるが,縮小はしない。 ところがその後,第1次世界大戦で大きな変化が起こったことは,このデータから明らかだ。
 パリはフランスの中でも最も格差が激しかった。 パリには飛び切りの大金持ちと,その日暮らしの貧しい人が同居していたわけだ。国全体の富の70%の富を持つ最上位 1%の層がいるかと思えば,何も持たない人々,相続する物と言えば数枚の皿程度,家は借家で,銀行口座も もちろん ない。僅かな衣類以外は着の身着の儘という人たちがいた。それが,第1次世界大戦前,1913年のパリの有り様だった。

(図表)イギリス
総資産における上位10%と最上位1%の資産シェア(占有率)


画像


 イギリスなど他の国には,フランスの相続税の記録のようなまとまった時系列のデータがない。その理由は既に述べたとおりだ。だが不完全ながらその傾向を探る手掛かりはある。

 驚くべきことにイギリスでも,第1次世界大戦までは 極めて高い資産集中が見られ,最上位 1%の資産のシェア(占有率)は70%に達していた。
 この数値は,パリの最上位1%のシェア(占有率)の70%とほぼ同じで,フランス全体で見た場合の60%より,10%も高かった。
 イギリスのほうがフランスより格差が大きかったのは,貴族階級が存在していたからだ。
 この講義でも話したが,1910〜1913年の頃には,既に,土地という富の重要性は薄れ,結局どちらの国も大きな違いは無くなってしまう。
 確かにウェスト・ミンスター侯爵の広大な地所を見ただけでも,イギリスの最上位の資産シェア(占有率)が高いことは分かるが,それは,そう大きなものではない。
 1913年にフランスのエリートは,自分たちの国はイギリスよりも平等だと自慢したが,それは真実ではなかった。
 むしろ,所得税や累進的な相続税を作らせないための言い訳に過ぎなかった。


 結局どのヨーロッパの国も,フランス革命のようなものがあろうが無かろうが,王様をギロチンにかけようが かけまいが,貴族制度を残そうが残すまいが,1913年までの時期は,どこも大きな差はなかった。
 どこもかしこも,とんでもなく不平等だった
ということだ。 

(図表)スウェーデン
総資産における上位10%と最上位1%の資産シェア(占有率)


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 スウェーデンについては幸いなことに,この国の経済学者たちによる優れた研究がある。これがとても興味深い。
 我々はスウェーデンと言うと,とても平等な国という固定観念がある。しかし,ずっとそうだったわけではない。
 スウェーデンは 第1次世界大戦までは,他のヨーロッパ諸国と同様,資産不平等が甚だしい国だった。それが是正されるのは,第1次世界大戦が起きてからだ。
 上の図は,スウェーデンの総資産の上位10%と最上位 1%のシェア(占有率)だが,ある研究者によればスウェーデンの資産不平等が最も小さかったのは,1980年頃だ。
 その頃の上位10%のシェア(占有率)は50%を若干上回る程度で,歴史的,世界的に見ても最も低い水準だった。その後若干上昇したが,今でも不平等はとても小さい。 (上の図表で黄色の部分)

(図表)アメリカ
総資産における上位10%と最上位1%の資産シェア(占有率)


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 アメリカはヨーロッパとは事情が違う。 19世紀のアメリカでは資産集中はあまり極端ではなかった。一方ヨーロッパの人々は,資産格差の強い世襲社会の時代を長く経験している。第1次世界大戦を経て,ようやく20世紀こそ平等な時代になったと思いきや,今ではそれが過去のものになったと感じ,弱気になっている。
 ところがアメリカでは,20世紀にさほど強い不平等を経験していないため,未来に対する見方はむしろ強気だ。
 かつてアメリカでは,平等な時代もあった。西部開拓の時代,皆が平等だった。
 不平等のあり方が違っていたと言うよりも,経済発展のあり方そのものが,まったく異なっていた。発展の初期において,アメリカの資産不平等が小さかった理由は既に少し述べた。 つまり,土地の価格が安く,誰でも簡単に土地所有者になれたということがあった。 白人のアメリカ人の中では,資産集中度はそう強いものではなく,簡単に地主になることができた。経済発展につれて資産集中も強まるが ヨーロッパほどには進まなかった。
 その後ヨーロッパの資産集中は弱まり,アメリカの資産集中がヨーロッパを上回るようになった。
 アメリカでは2つの世界大戦の衝撃がヨーロッパほどではなかった
ということだ。

(図表)アメリカとヨーロッパ
総資産における上位10%と最上位1%の資産シェア(占有率)


画像


 このグラフはヨーロッパの資産集中の推移を表したものだ。
 ヨーロッパと言っても,フランス,イギリス,スウェーデンの平均だ。 これら3か国は,同じような推移を示している。他の国のデータもあれば良いのだが。恐らく他の国も同じような傾向を示しているだろうから,これで一応,この時期のヨーロッパを代表させて良いだろう。問題は,19世紀から今日までの全期間のデータを持つ国がないことだ。しかし,差し当たりこれで考えてみよう。
 すると,第1次世界大戦以前の時期においては,ヨーロッパがアメリカよりもずっと不平等で,1950年代までそれが続いていることが分かる。

 2つの大戦の間の時期に,アメリカとヨーロッパ,双方で不平等は是正され始めるが,その差は埋まらなかった。
 しかし今日では,アメリカのほうがヨーロッパよりも,より不平等になってしまった。スウェーデンは今では平等な国だが,100年前まではそうではなかった。
 私たちは平等な国はずっと平等で,不平等な国はずっと不平等であるかのように捉えがちだが,その国の制度が何百年も維持されるということは,まず,ない。常に変化している。不平等の国別ランキングは,未来永劫不変ではない。
 どんな政策を選ぶかで,状況は一変する
ので,固定的に捉えてはいけない。

(図表)パリ市民の総資産の構成
(1872年と1912年 比較)


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 これは1872年〜1912年のパリ市民の資産保有の内訳だ。 資産シェア(占有率)の資料も加えてある
 フランスのデータは ディジタル・データになっていて,不動産,金融資産,株,民間 および公的債権,資産保有者の年齢など 様々なことが分かる。
 1872〜1912年という資産集中の上昇した期間に資産保有の内訳がどう変わったか,これで分かる。
 不動産の割合は,42%から36%へ低下した。
 金融資産は,56%から62%へ上昇している。
 それ以外に家具・装飾品などもあるが,これらは数%と,大きくない。
 資産の内訳の大部分は,何と言っても不動産と金融資産だ。
 パリでは,不動産そのものの資産価値の割合が大きい。
 しかしパリ以外では,不動産の資産価値の割合が小さい。不動産には農地・城・家屋などが含まれているにもかかわらず,その割合が小さい。

 金融資産の内訳を見ると,投資対象が極めて多様化していることが分かる。
 既にフランスは農業社会ではなく,分散投資が進んだ極めて現代的な経済だったということに注目してほしい。
 株への投資,社債(民間企業の債券)公債への投資の内訳も,それぞれデータで示されていて,大変興味深い。教科書で勉強する投資対象の選択や,分散投資の実際のお手本のようなものだ。

 当時は 金融資産は,投資家による直接保有が大部分だった。 今では私たちは生命保険会社にお金を預けたり貯蓄プランに基づいて預金したりする。 そのお金で銀行などが直接株を買う。 つまり,あなたが直接株を買うわけではない。 自分で直接投資する人もいるが,個人個人の金融資産の投資の大半は,間接金融と言って,金融機関が預金や信託の形でお金を預かって仲介する。 けれども当時は,株や債券の直接保有が主だった。資産保有者は細かい事情に精通し,企業のリストの中から選択し,世界中に自分のお金を投資する。
 持たざる者は,数枚の皿のみ。持てる者は,分散投資,という現在さながらの経済だ。

 次は,最上位 1%を見る。

(図表)最上位 1%の資産保有者の構成
(1872年と1912年 比較)


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 当時既に,最上位 1%の人が,かなりの金融資産を保有,とくに株の形で保有している。 債権の保有は,それ以下の層のほうが多いが,株は,最上位1%のほうが多く保有している。
 国内と海外の区分を見ると,最上位 1%の海外投資の割合は非常に高く,巨額のお金を注ぎ込んでいることが分かる。スエズ運河などの投資がそうだ。

 第1次世界大戦以前に起きた資産の極端な集中が,資産の形態から見ても現代と同じだった点が,とても興味深い。
 伝統的な土地という資産ではなく,高度に発達した市場の中で様々な金融商品や資産を売り買いする現代的な経済だと言える。


< 続く >

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