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zoom RSS 根本的に理想的な税制は,累進的な資産課税

<<   作成日時 : 2015/02/17 16:35   >>

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トマ ・ ピケティ 『21世紀の資本』
第6回 (3/3)
 
Eテレ 2月13日(金)放送分
「これからの資本主義」〜再分配システムをどうつくるか〜


❏ 20世紀に相続税の累進性を高めたアメリカとイギリス

 下図は相続税の最高税率の推移だが,そもそも最高税率とは何だろう。

 累進税制の場合,所得や相続のレヴェルに応じて税率が異なってくる。
 最高税率とは,最も高い所得や相続資産の区分に対して課せられる税率だ。

(図表)相続税の最高税率
縦軸 0〜100% 横軸 1900〜2012年
フランス,イギリス,アメリカ,ドイツ

画像


 現在のアメリカ,イギリス,ドイツ,フランスの相続税の最高税率は,40%くらいだ。
 フランスは今や45%だ。
 つまり,最も高額の個人の相続資産に対する税率が40%〜45%ということだ。例えば自分の子どもに資産を残すときなど,それだけの税率がかかる場合もあるということだ。

 20世紀に,アメリカとイギリスでは,相続税の最高税率が 70%〜80%という高水準に達したこともある。フランスやドイツは,それよりも低く,当時も30%〜40%だった。

 なぜ,アメリカとイギリスは累進性を強めたのだろうか。
 それは,フランスとドイツでは,戦争による資産の破壊によって,すでに再分配が事実上行なわれていたからだろう。ある意味,最高税率を高める必要がそれほどなかったわけだ。

 税制だけが,富の再分配の唯一の方法ではないということだ。
 資産の破壊や,極めて高いインフレーションは,公的債務を削減する方法でもあり得る。

 フランスやドイツでは資産の再分配が,戦争による大規模な資産破壊によって実現した。これが,アメリカやイギリスほど,累進課税を強めなかった理由だ。
 アメリカやイギリスでは,累進課税は極めて高く,相続資産に対しては 70%〜80%になる。
 資産税や相続税については,まだまだ説明しておくべきことが沢山ある。
 なぜなら,国によって,誰に贈与するかで,資産税や相続税の適用のあり方が大きく異なってくるからだ。
 アメリカなどでは,相続資産は,子どもだろうと友だちだろうと愛人だろうと恋人だろうと,誰に贈与しても税率は同じだ。
 けれども,フランスやドイツでは,子どもへの遺産相続の場合は,このような税率だ。子ども以外に対する譲渡の場合,税率は高く設定されている。
 資産に対する課税についても,色々説明が必要だ。
 最高税率だけを見るというのは荒っぽいやり方なので,もう少し詳しい説明が必要となる。

❏ 今後重要になる資産と相続資産に対する累進的な課税
労働所得の増加率は極めて低く,資本所得比率が上昇する現状
多くの国で労働所得に対する減税と,資産税に対する増税の動きがある


 これまでは,累進所得税について話しを進めてきた。 そしてまた累進相続税についても,少しだけれども講義してきた。

画像

資産所得比率 = 総資産 ÷ 国民所得

 資産所得比率が表象していることとの関連では,資産と,相続資産に対する課税の問題が,これからますます重要になってくる。この点について手短に話しておこう。

 すでに見てきたように,イタリアやスペインでは現在,成長率が低下し,とくに労働所得の増加率は極めて低いので,民間資産,不動産,金融資産などによる資産からの収益の割合が上昇している。
 そうした中で,労働所得に対する税を少し減らし,民間資産に対しては増税をすべきだというのは常識の問題だ。
 ある意味で,すでにその動きは多くの国で始まっている。

 イタリアとスペインは,固定資産税を2年前に復活させた。

 資本所得比率が上昇する現状からすれば,こうした対応は避けられない。

 最近,イギリスでいわゆる「豪邸税」をめぐる,とても興味深い論争があった。この税の対象である豪邸とは,大きな不動産資産のことだ。
 当初の「豪邸税」は数年前に前労働党政権が導入したもので,100万ポンド(≒1億8200万円 £1≒¥182)以上の邸宅の譲渡に対して5%の税率で課税するというものだった。
 当初,保守党は強く反対した。
 ところが,自分たちが政権を獲った途端,200万ポンド(≒3億6400万円) 以上の邸宅の取り引きに7%を課すという税を作りだした。
 次に選挙をやったら,今度は超党派でその税率を引き上げるに違いない。


 とくに不動産は,海外に逃げることもなく税金がかけ安い。
 だから,左翼政権であろうと保守政権であろうと,
不動産所有者に多少の痛みを押しつける誘惑にいとも簡単に駆られやすい。とくにロンドンに構えた邸宅などは恰好の餌食というわけだね。

❏ 現状は賃金が伸び悩んでいるから,高額不動産および国境を越えた金融資産を課税の対象にする

 私は今後このようなことが,多くの国で,その政権の性格に係わらず起こってくると思っている。ある意味で,それは常識の問題だ。

 皆の賃金が伸び悩んでいるときに,ロンドン,パリ,マドリード,ローマといった一等地の高額の不動産の税率に手をつけないというのは,バカげている。

 確かにこうした課税には難しいことも多いし,不動産だけでなく,金融資産をも対象にしようと思えば,当然のことながら国境を越えた金融資産の情報の交換が,これまで以上に必要になってくる。

❏ 金融資産を考慮していない現在の資産税

 では,累進的な資産課税はどうあれば良いのか。これについて基本的な考え方を説明しよう。

 不平等の経済理論では,一般に相続税は,相続するときに1度だけ課税されるものだとされ,一旦相続されれば後はその資産をどう運用しようと,毎年その資産に課税されることはない,というものだ。
 相続税に加えて,年々の資産税を納めることに,どういう意味があるのか。

 毎年かかる資産税は,どこの国にもあるものだ。
 資産連帯税があるフランスだけではなく,どこの国にも少なくても毎年納める固定資産税という形の資産税がある。

 アメリカやイギリスなどの固定資産税は,不動産に対する定率での課税だ。
 金融資産にはかからないが,不動産はすでに総資産の半分を占めている。
 包括的な資産税ではないが,資産の半分は課税対象となっていることになる。

 現在の資産税は,金融資産を対象としていないので,包括的な資産税とは言えないし,しかも税率が一定だ。

 これは地域ごとに違いはあるが,基本的に定率だ。
 よって,10万ユーロ (≒1350万円 € 1 ≒ ¥135)の小さなアパートを持っていても,100万ユーロ(≒1億3500万円)の大きな不動産を持っていても,1000万ユーロ(≒13億5000万円)の大邸宅を持っていても,税率はほぼ同じだ。

❏ 定率課税を累進的な課税に改める

純資産課税
純資産に対する累進課税なら低率の固定資産税より低額になる


 また,現在の資産税は,金融資産を考慮していないだけでなく,マイナス資産である住宅ローンや借入金を考慮していない。
 もしも,40万ユーロ(≒5400万円)の不動産を持っているが,同時に39万ユーロ(≒ 5265万円)のローンを抱えているとする。すると,純資産は1万ユーロ(≒135万円)に過ぎないので,それほど豊かではない。
 家を借りた時と同じくらいのお金を金利として支払っている。いつか金持ちになるかも知れない。今はそうではない。
 純資産に対して累進課税されれば,今払っている定率の固定資産税よりも少ない額しか払わなくて済む。
 固定資産税などの資産税は,すでにある。

 私の考えでは問題は
トータルの税収を増やすよりも
現状の定率の税を できるだけ
累進的なものに改めることだ。
税率をを下げるべき人々に対しては下げ,
上げるべき人たちには上げる。
そして,税収を維持する。

 これが課題だ。

❏ 資本市場の不完全性と,資産によって収益率が大きく違うこと
例えば,資産の少ない者が,借り入れ制限があるため借り入れができないこと

情報の非対称性などが存在する資本市場では,資本市場が不完全であるということで,金融政策が実質経済に影響を与える

 相続時に1度だけ課税するのではなく毎年資産に対して課税すべきかを明らかにすることが,なぜ,問題なのか。
 これにはいくつかの説明がある。

 1つには,課税に対して納税者がある種の錯覚を持っているという説明だ。人々は相続の際に多額の相続税を支払いたくない。郷里(いなか)の実家の家を相続して30%もの相続税を払うのはまっぴらだと思うだろう。だから,1%ずつ30年間支払うほうを好むというわけだ。
 納税者は固定資産税をずっと支払うことになることを,理解していないのか。フランスの地価税や他の国の固定資産税は,毎年,資産価値の少なくとも1%ほどだ。結果的に支払いがかなりになることを,人々は理解していないのか。

 その理由は,資本市場が不完全なためだと思う。

 資本市場が不完全な場合,返済能力があっても,資金を借りることは難しい。人々は,相続税を支払おうと思えば,相続したばかりの不動産を売り払う必要さえ出てくるかも知れない。
 資本市場が完全で,柔軟に資金が借りることができれば,こうした問題はないので,借金してでも一度に相続税を払うほうが効率的だ。

 もう1つの説明は,個人によって,また資産の額によって,収益率が かなり違うということだ。
 あなたが資産を相続したときに,その資産がどの程度の利回りになるか,分からない。
 例えば,1973年の時点で10万ユーロ (当時1フラン70円とすると 700万円) だったパリのアパートを相続したとする。それが今や500万ユーロ(≒6億7500万円)の値打ちとなり,年々20万ユーロ(≒2700万円)の家賃収入を生むなんてことは,誰が想像できただろうか。
 そんな場合もあるので,相続のときだけ一括で巨額の税を課し,あと40年間何も課税しないというのは,まったくバカげている。
 より合理的な方法は,相続時にどれくらい払って,その後毎年どれくらい支払うかを,その時点の不動産価格とその後の収益見通しとの兼ね合いで考えることだ。

 将来的には,巨額の資産に対してどの程度の最高税率にするべきだろうか。

 理想的には,それは個々の所得階層の資産の伸び方にもよる。

世界の富裕層の資産の伸びを見たが,
こうした人たちの資産が
年率6%〜7%で拡大しているとすると,
1%〜2%の税率で資産税をかけたとしても,大した影響はないことは明らかだ。


(※)関連
世界の上位資産保有者の実質成長率
上位1億分の1の資産保有者 6.8%
上位2千万分の1の資産保有者 6.4%

画像


 資産に対する1%〜2%という税率は,フランスの資産連帯税と同様の累進制だ。
 かつては1.8%だったが,1.5%に引き下げられた。
 現在,金利が低くなっているから資産税の税率も1.5%にすべきだったという議論がある。
 しかし,富裕層が持っているのは,利回りの低い国債ではない。 だから,本当の意味の比較にはならない。

 雑誌Forbesフォーブスの長者番付に名前が出る人々や,アメリカの大学の基金の資産運用の実績は,6%〜8%が当たり前という状況なので,1%〜2%の税率が苦になると言うのは見当違いだ。

資産運用の実質成長率が6%〜8%なら,
税率は1%〜2%どころか,
もっと高くても良い。

 この考え方は,事実としてこれまで確認してきたことに一貫しており筋道が通る。

私は根本的に
累進的な資産課税が重要であり,理想的な税制と考えている。


 所得税もそうだが,累進的な資産課税は,様々に異なる資産グループがどう変化するかをデータで見ながら,税率などを調整できるという利点がある。

 もし資産が年率6%〜7%といった速さで増加しないのであれば,税率をそれほど高める必要はない。
 資産の収益率が,経済成長率と同じく年1%〜2%程度に過ぎないとすれば,累進税制を強める必要はない。
 しかし恐らく,資産の収益率は経済成長率を上回るから累進税制も止むを得ないだろう。

 いずれにしても,正確な情報に基づいて適切な税率を決めることが大事だ。では,時間がきたようなのでこの辺で終わることにしよう。講義に耳を傾けてくれて有り難う。 本当に有り難う。
< 学生たち・拍手>

< 了 >

(※)関連
2015/02/10 17:41
http://4472752.at.webry.info/201502/article_12.html
世界資産の億万長者への集中度100%になることが,理論的に想定できる


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