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zoom RSS スケール・メリット : アメリカ大学基金 大規模な金融資産の運用の実態

<<   作成日時 : 2015/02/10 23:29   >>

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トマ・ピケティ 『21世紀の資本』
Eテレ2月6日(金)放送分
第5回(3/3)
世襲型資本主義の復活〜19世紀の格差社会に逆戻り?〜


❏ アメリカの大学の投資先は,複雑な金融派生商品,商品デリヴァティヴFinancial derivative products(先物取引,・オプション取引・スワッブ取引など)や,プライヴェイト・エクイティPrivate Equity Fund=未公開株。さらに資金管理アドヴァイザに多額の報酬を支払う

 次に大学の基金のデータだが,これは大規模な金融資産の運用の実態,投資の規模の問題がクリアに表れているので,大変面白い。もちろんそれ以外の要因も働いているが,少なくてもそれらの効果がとても良く理解できる。

 この大学の基金に関するデータは,Forbesフォーブスのデータよりもはるかに質が高い。
 独自の基金を持つ全米800余りの大学を網羅している。
 その総資産は,何と4000億ドルにも達する。1大学あたりでは,その平均資産額は5億ドルになる。
 世界の億万長者の資産と比べれば,はるかに小さいものだが,投資戦略の詳しい内容が分かる。
 我がパリ経済学校の基金のデータは残念ながらここにはない。 と言うのも,ここの基金の規模はあまりに小さ過ぎて,アメリカの大学とは比較にならないからだ。
 下の表から何が分かるだろうか。

(図表)アメリカの大学基金の収益率(1980〜2010年の平均)
画像


 まずここから,アメリカの大学が基金の運用で,どれほど稼ぎだしているかが分かる。
 年間収益率の数字は1980〜2010年の平均だ。
 850の大学の収益性の平均値は,とても高く,8.2%だ。
 これは,インフレ分を除き,さらに管理コストを差し引いた残りの,実質的収益率だ。ファンドの管理費用などはすべて差し引いたもので,これほどになる。

 もし私たちが銀行に行って同じだけの金利を欲しいと言っても相手にされないよね。
 確かにこの数値には,景気が良かった時代の収益性も含まれているので,これが今後数十年間も続くとは言い難い。
収益性の数値は,今後はもう少し小さくなるだろうが,それにしても高いには違いない。

 この表の面白いところは,基金の規模が大きいほど収益性も高いということだ。
 全大学の平均で8.2%だが,1億ドル未満で基金の小さい大学では6.2%だ。
 パリ経済学校は1億ドル以下だから,4〜5%になるだろうか。ハーヴァード,イエール,プリンストン大学という規模の大きいところは10.2%だ。

 なぜ収益率が高いのか。
 まず第1に,こうした大学は利回りの低いアメリカ国債などには手を出さない。中国やサウディ・アラビアなど アメリカ国債をせっせと買う国があるが,ハーヴァードやイエール大学は1ドルたりともアメリカ国債に投じていない。何十年もそうだ。とても悪い投資先だからね。
 アメリカの大学が何に投資するかと言うと,もっと複雑な金融派生商品,商品デリヴァティヴFinancial derivative products(先物取引,・オプション取引・スワッブ取引など)や,プライヴェイト・エクイティPrivate Equity Fund=未公開株などだ。それだけではない。彼らはさらに資金管理のアドヴァイザに多額の報酬を支払う。ハーヴァード大学の場合だと,基金の規模が300億ドルから400億ドルで,その0.3%を管理コストとして使う。
 それだけでも約1億ドルになる。これで,資産管理の素晴らしいチームを雇い入れることができる。本当にコストがかかるが,1億ドルもあれば,優秀なチームを雇える。そのお蔭で収益率は,8%とか6%とかではなく10%になるのだから,0.3%は惜しくはないわけだ。もともと1億ドルしかなければ,1億ドルをマネジメントに支払うなんて到底できない。
 もしあなたが10万ユーロ持っていて,親戚の誰かから投資のアドヴァイスを受けたとしても恐らく上手くいかないだろう。


規模の効果 スケール・メリット
❏ 資産があれば働かなくても極めて高い利回りで資産を増やせる


 投資の運用には,スケール・メリット(資産規模が大きくなることで得られる利点)つまり規模の効果が重要だ。
 この点でも目を見張るものがある。比較してみると面白いが,まず,このメカニズムは,何も世界の大口の資産の運用だけの問題ではない。
 個人の資産は,大学の基金とはまるで異なるが,個人でも自分で事業を興して豊かになる人がいる。個人の資産の変動についても,この話から得られる教訓は,なくはない。
 スケール・メリット=規模の効果は,個人の資産にとっても存在し,なぜ,ある程度資産のある人は,働かなくても,極めて高い利回りで資産を増やすのかが分かるというものだ。

❏ アメリカの大学基金のうち,個人の寄付は5%以下。金融収益が95%

 このことと,アメリカの大学に対して行なわれる個人の寄付とを比較してみるのもまた面白い。
 個人の寄付については可笑しな話が多いが,しばしば億万長者たちが途轍もない慈善心を発揮して,莫大な寄付を,教育機関や医療機関,はたまた自分の母校の大学に対して行なうことがあるよね。とても素晴らしいことで,もう税制など要らないのではないかとさえ思いたくなるが,実は,寄付金の割合には誇張された部分が多少ある。これを見るためのデータがある。これも大学自身が公表しているものだ。
 ハーヴァード大学の場合,同じ期間を通じて 大学に出された寄付の年平均は,基金全体のわずか数%だった。
 基金の収益全体と比べると,それは極わずかな金額であり,それ自体は重要ではない。確かに数%は小さい額ではないが,運用益と比べれば極わずかだ。

 なぜ,ハーヴァードやイエールやプリンストン大学の基金は,この20年で10倍にもなったか,分かるかな。
 1990年に,その基金は20億ドルか30億ドルといった規模で,当時も最大だったが,今や10倍に膨れ上がって300億ドルから400億ドルだ。
 それは,個人の寄付が寄せられたためではない。
 個人の寄付は,わずか5%以下。金融収益が95%で圧倒的だ。
 寄付の重要性を言う人がいるが,データから見ると,そうではない。


◇ 教育の不平等および「アメリカの大学基金」関連のメモ

トマ・ピケティ 『21世紀の資本』
第3回 「不平等と教育格差」労働所得の不平等はなぜ起きるのか
(1/3)
2015/01/27 00:31
http://4472752.at.webry.info/201501/article_28.html
教育の機会均等については,どの国も偽善的な面が多々ある

(2/3)
2015/01/28 01:44
http://4472752.at.webry.info/201501/article_29.html
所得下位層が沈み込んだアメリカ,最低賃金が最安の日本

(3/3)
2015/01/28 12:40
http://4472752.at.webry.info/201501/article_30.html
なぜ,きわめて最上位層への所得集中による不平等は起こるのか

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