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zoom RSS 超富裕層が政治にも大きな影響力を持つ

<<   作成日時 : 2015/01/20 12:40   >>

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トマ・ピケティ 『21世紀の資本』Eテレ 第2回 (3/3)

❏ 所得不平等の歴史的変化 フランス

(図表)フランス 上位層(10%)の総所得と労働所得のシェア(占有率)
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 このグラフは,フランスの例だ。1910年から100年間のフランスにおける不平等を対比させたものだ。
 上位10%の総所得に占めるシェアと,労働所得に占めるシェアとの差が,歴然と分かる。
 この2つの違いとは,資本所得が入っているかどうかだ。
 総所得は,その大半が賃金である労働所得と,利子や配当などからなる資本所得によって構成されている。
 フランスでは,総所得の不平等は長期的に減少したが,それは何よりもまず上位層の所有する資本所得が減少したことによるものだ。
 労働所得の不平等については,長期的にそう大きくは変化していない。
 上位層10%の所得シェアは,常におよそ25%くらいだ。

 とは言え,多少の変動はあった。
 1968年から1983年まで,最低賃金が大幅に引き上げられた。
 この時期にフランスに住んだ人は,お金持ちの所得の上昇率よりも,最低賃金の上昇率のほうが早く上昇するという異例の事態を目の当たりにできたわけだ。

 1930年から1935年を見てみよう。この時期に,何が起こったか。とても複雑な時代だ。
 そこで起こったことを見るために,上位10%を,さらに最上位1%とそれ以下の9%とに分けて見る必要がある。
 2つの違った変化があることが分かる。
 最上位 1%のシェアは,この時期に大恐慌のあおりを食って減少した。
 それまで配当を受け取っていた人たちが,それを失った。彼らのシェアは激減。
 でも,このグラフにもあるように,シェアはなぜ上昇しているのだろう。最上位 1%に入らない残りの 9%の人々は,元々,配当による収入は少なく,賃貸収入や,それなりの報酬を得ていた人たちだ。主に公務員,工場のエンジニアなどだった。こうした人々にとっては,大恐慌のデフレはむしろ有利に作用した。
 失業と賃金の減少とで経済活動の全体的水準は,1930年から1935年の間に約30%低下した。
 このことは,職を失わなかった上位層のシェアが,相対的に高まることを意味した。

 細かくなったけれど,こうした数値の背後にあるものを覚えておいてほしい。それぞれの歴史には,それぞれ具体的なストーリーがある。

❏ 1980年代以降,日本の最上位 1%への所得集中は徐々に高まる

(図表)最上位 1%の総所得のシェア(占有率)
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 日本の最上位 1%の所得集中のシェアは,フランスなど大陸ヨーロッパ諸国と同じように比較的穏やかだった。
 しかし,1980年代以降,日本の上位1%への所得集中度は徐々に高まる傾向にある。


 ❢ なぜかこの番組では,日本についてのピケティ教授の講義そのものを放送することはなく,このようなナレーションで済ませている。 これは,私の宿題ではありますが,英語とか仏語とか読める方はピケティ教授のウェブサイトを参照なさってください。 by Reina

PARIS SCHOOL OF ECOMICS
ECOLE D’ECONOMIE DE PARIS
Thomas Piketty

http://piketty.pse.ens.fr/fr/

❏ フランス 上位層の所得変化の歴史

 所得の変化やその性質を理解しようと思えば,それぞれの所得グループの構成を良く理解する必要がある。

(図表)フランス 上位層(10%)の所得構成 (1932)
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 これは1932年のフランスのデータだが,上位10%をさらに細かく分けてみた。
 (グラフの左側から) これが,上位10%の下半分だ。その上に4%があり,最上位の 1%がそのまた上にある。
 10%のうちのこれらの部分の人々は,それぞれの立場によって経済的,社会的,政治的に,違った見方をする。
 上位層10%のうちの下位5%は,1932年当時も今もその所得の大半は労働所得, 要するに賃金だ
 ずっと上のほうに行くと=最上位層になるにしたがい,労働所得はだんだんと比率を下げ,資本所得が重要になる。

 納税記録によって私たちはこうした精密な分析を得ることができる。納税記録は,家計調査からは窺い知れない全ての納税者の包括的なデータであるから。
 家計調査はサンプルが十分でなく,自主申告制なので富裕層は正直には答えていない。 そこで,こうしたグラフを作るためには,行政による包括的なデータが必要だ。

(図表)フランス 上位層(10%)の所得構成(2005)
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 この2005年のグラフを見よう。
 資本所得のシェアが上昇し,労働所得のシェアが低下している。
 これは極めて一般的な形で,どこの国にも当てはまる。

 
 そしてここに所得の3つ目のカテゴリーがあって,混合所得(紫色の線)と呼ぶ。
 混合所得とはいわば自営業所得のことだ。なぜ混合かと言えば,それは部分的には労働所得であるし,部分的には資本所得だからだ。
 例えば医師の所得は,一部は人的資本投資から得られた収益であり,その意味では労働所得だ。だがその他に医療機器という非人的資本投資に対する収益もあり,その意味では資本所得だ。その区分が困難なので独自に扱っている。典型的な例で言えば医師,弁護士,比較的小さな商店などの小規模経営はだいたいそうだが,たとえ大きな企業でも 所有と経営が分離していない場合は,これに当てはまる。オーナーと経営者が同一人物で,所得に配当と賃金といった区別がない。 それがつまり混合所得だ。

混合所得(自営業所得):配当と賃金の区別がない所得
労働所得 ← 人的資本投資(知能や技能)
資本所得 ← 非人的資本投資(医療機器など)


 もしもあなたが最上位 1%の人たちと同じようなお金持ちになりたいと考えているなら,月に2万から5万ユーロを稼ぐような例えば医師や弁護士になるというのは悪い選択ではないかも知れない。 けれども本当の上位層に入りこむためには,やはり資産が必要だ。資産によって配当収入などを得られるよう戦略を考えるべきだ。このグラフが示すのもそうで,所得の形態的な違いは,所得の水準と密接に関連している。

【学生・質問】
 課税後所得になると,どう違うのか? 資本所得の課税が少なければ,あまり違いはないのか?

【ピケティ教授】
 確かに全体的な曲線の形は大きくは変わらないが,あなたが言うように 多少の変化は見られるだろう。それは時とともに変化は大きくなる。
 長い間,資本所得は労働所得よりよりも重く課税されていた。
 所得税が作られたときには,資本所得は労働所得よりも重く課税されていた。今では各国の課税競争などで,逆の傾向が強まっている。
 実際,課税後のシェアでは,労働所得のほうが高いだろう。


【学生・質問】
 2年前の税制改革で変化はあったか?

【ピケティ教授】
 ここでは歴史の話しはしてきたが,最近のことはあまり話さなかった。だけど,大きな変化が起こっているとは思えない。
 上位の資本所得の多くは,キャピタル・ゲイン(資本利得=有価証券つまり債券や株など,または資産の売買による利益のこと。資産価格の上昇による利益)で,この2年間の制度改革でそれが影響を受けたとは言えないから。
 変化があるとすれば,新たな課税制度は 2012年の制度改革の前よりも,キャピタル・ゲインに対する課税が寛大だと言うことだろう。

❏ アメリカは,所得不平等が極めて急速に拡大

 アメリカの上位層の総所得のシェアを見よう。これにフランスの場合を重ねる(下の図表の灰色の線)と,違う点に気がつく。

(図表)アメリカ 上位層(10%)の総所得のシェア(占有率)
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(図表)アメリカ上位層(10%)の総所得のシェア(占有率)にフランス上位層の総所得(灰色の線)を重ねて比較
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 アメリカでは総所得の不平等が,20世紀前半に減少している(1945年)ことが分かる。
 大きく違うのは,フランスはこの時期全体を通じて変化が少ないということだ。最後の部分で少し上がっているが,長期的に見れば一定だったことを示している。

 それに対してアメリカは,所得の不平等が極めて急速に拡大している。
(図表)アメリカ上位層(10%)の総所得の占有率 (キャピタル・ゲインを含むものと 含まないもの)
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 曲線は2つある。キャピタル・ゲインを含むもの(赤色の線)と,キャピタル・ゲインを除くもの(オレンジ色の線)だ。
 キャピタル・ゲインとは,例えば株を買った時よりも株式市場で高く売れた時の,その差額を指す。
キャピタル・ゲイン 企業の役員や従業員があらかじめ決められた価格で自社株を買う権利
会社への帰属意識を高めることを目的に,経営者や従業員に自社株を一定価格で購入する権利を与える制度

 では,ストック・オプションの場合はどうか。
 ストック・オプションとは,あなたが企業の経営者だった場合に報酬として自社株の購入権を与えられるということだ。
 例えば今の株価が1株100ドルで,購入権も100ドルだとしよう。
 もしも株価が200ドルに上がった時に,その購入権を行使すると,その株を100ドルで購入できる。それを売却すれば,1株当たり100ドルのキャピタル・ゲインを得られるというわけだ。
 しかしアメリカでは税法上,これはキャピタル・ゲインではなく労働所得と見做される。
 ストック・オプションは,経営者として働いた報酬として与えられる
からだ。
 キャピタル・ゲインには,周期的な変動がある。
 2000年と2001年の株の暴落インターネット・バブルの第2次崩壊で,株価は大暴落を起こした。
 2008年のリーマン・ショック。この時は,株式市場が大暴落し,キャピタル・ゲインを得られるような状況ではなかった。これが,こうした時期にキャピタル・ゲインが小さかった理由だ。
 逆に2000年や2007年のブームの時期は,キャピタル・ゲインは大きく膨らむ。
 ここで最も重要なメッセージは,株式市場の周期的な変動は,所得分配の点で短期的な変動をもたらすが,長期のトレンドには影響を与えない。

 では,この上位10%の総所得を表したグラフを細かく見よう。
 黄色の線が,所得トップ 1%。緑色がそれに次ぐ4%の層。青色は残りの5%。
(図表)アメリカ 上位層(10%)の総所得の構成
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2010年 アメリカの上位層 年間所得
1%      $ 352,000
5%〜1%    $ 150,000〜352,000
10%〜5%  $ 108,000〜150,000

 トップ1%の 2010年の年収は 35万2千ドル以上だ。上位10%は 10万8千ドル以上だ。上位5%は 15万ドル以上だ。 だからおよそ10万ドル,15万ドル,35万ドルだ。
 総所得に占めるシェアはどれも大きい。
 10万ドルから15万ドルというと,アメリカの経済学部の教授並みの所得だ。 もっと稼いでいる先生は,年収15万から30万ドルかも知れない。
 所得占有率は非常に大きく,しかもそれが年々増加している。
 つまり,この階層の所得はアメリカの平均所得の増加よりも早く増加しているということだ。

 これは,色々なことを教えてくれる。彼らの世界観にも様々な影響を及ぼしているだろう。だって,自分の所得が平均より早く増加すれば気分が良いはずだよね。経済は,能力や技能がある者にはちゃんと報いてくれるのだとか思ったりしてね。自分が生み出す価値によって所得が決まると言う経済学の理論を信じたくなるのも,無理はないかもね。
 所得がどう分配されるのかを考えるのが仕事の経済学者でも,自分自身の所得によって考えは左右されるものだ。
 実際は経済学者たちはかなり良い生活を送っているが,その上の層はさらにリッチだ。
 35万ドル以上の所得の人々(黄色の線)は人口の1%を占め,15万〜35万ドルの人々(緑色の線)は人口の4%,10万8千〜15万ドルの人々(青色の線)は人口の5%となっているが,トップ1%の人々の所得は,以前と比べても増えていて,今では約25%の所得を占めている。
 この最上位1%の所得(黄色の線)のシェアは,ずっと増え続けている。
 驚くべきことに上位10%の所得が上昇したと言っても,実はその大部分は,最上位1%の所得の増加によってもたらされたものだということだ。

 さて,これはアメリカの上位層の総所得と労働所得のシェアを分解したものだ。
(図表)アメリカ 上位層(10%)の労働所得のシェア(占有率)
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 フランスでは,上位の労働所得は長期的に安定していて 所得格差の縮小はもっぱら上位の資本所得が減ったことによるものだった。
 アメリカの事情は,フランスとはだいぶ異なる。
 この数十年間で,上位層は労働所得も大きく伸ばしている。
 アメリカでも上位層の資本所得の増加はもちろん重要だ。だが,近年の格差拡大の要因のほとんどは,上位層10%,さらには最上位層1%の労働所得のシェアの増加によるものだ。

❏ 所得上位層の影響力

 最上位1%に着目することだ。総所得(赤色の線)労働所得(緑色の線)

(図表)アメリカ 最上位(1%)の総所得と労働所得のシェア(占有率)
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 このグラフの最後のほう,現代に近づくにつれ,最上位 1%の労働所得のシェアと資本所得シェアの差は,ほぼ同じ割合に近づく。少なくともその差が,過去に比べて小さい。
 これは,上位所得層に,超高額の所得を稼ぐ人たちが増えているという実情を反映している。

 ここで,1929年のアメリカ上位所得の構成を見てみよう。

(図表)アメリカ 上位層(10%)の所得構成 1929年
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 上位層を見ると,資本所得(黄色の線)が労働所得(緑色の線)を上回るという一般的な形を示している。
 これは極めて特徴的だ。
 上位5%から10%の人々は労働所得が60%を占めている。
 0.01%以上の人々のシェアは10%だ。

 これは1929年だが,既に上位10%には,様々な所得階層が存在している。その動きを理解するために,再び,内部構成に分け入ってみよう。

(図表)アメリカ 上位層(10%)の所得構成 1929年〈上〉と2007年〈下〉
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 2つのグラフうちの〈下〉は2007年のものだが,上位層ほど資本所得の割合が大きい。
 しかし,資本所得が 労働所得を上回るのは,超富裕層 0.1%の人々の現象だ。
 上位層ほど資本所得の割合が大きいが,資本所得が労働所得を上回るのは1929年ではトップ1%や0.5%以上で既に見られたことだ。
 ところが,2007年には最上位0.1%あるいは0.01%という超富裕層までいかないと,資本所得の割合が労働所得を上回る実態は見られない。

 トップ 1%とか 0.1%と言うと,小さいグループだと思うかも知れないが,これは誤った認識だ。
 1%というのは実は大きい数字だ。
 それは,フランス革命の時代の貴族の階級の規模でもある。貴族階級は人口のほぼ1%〜1.5%だった。
 この重要性を見逃してはいけない。
 社会を組織する上で,1%という数字は大きな意味を持つ。
 人口3億人のアメリカで,1%と言えば約300万人にも相当し,最上位の彼らは政治にも影響力を持つ。
 さらにその上の超富裕層,0.1%や 0.01%の人々なら 尚更のことだ。
 こうしたグループの人々は,数は少なくとも,その影響力は計り知れないものがあるのだから。


 では次回は,不平等と教育の問題を見て行こう。

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